やってはいけない行為(不動産)

最終更新日: 2019年02月07日

カテゴリ:

執筆: 弁護士 辻悠祐

不動産売買の営業であり得る行為として、営業マンが手付金を支払えない買主に対して手付金を貸し付けたり、分割払いの約束をすることが考えられます。このような営業行為は、お金のない買主の購買意欲を高めるもので、効果的な行為かもしれません。しかし、 このような行為は、買主が容易に契約できるかのような心理状態に陥らせ、後日買主が冷静になって購入意思を失い、売買契約の解約を申し入れようとしても、契約が成立している以上、手付放棄をしなければ契約関係から離脱できず、宅建業者が貸し付けた手付金の返還をめぐって紛争が生じる事例が多数生じたことから、現在は禁止されています。

よって、買主に対して手付金を貸し付けたり、分割払いの約束をすることは、宅建業法に違反しており、行ってはいけない行為です。以下、宅建業法の該当箇所を抜粋いたします。

宅建業法
(業務に関する禁止事項)
第四十七条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
三 手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為
(指示及び業務の停止)
第六十五条
国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許・・・を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定・・・に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。
一 業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき又は損害を与えるおそれが大であるとき。
二 業務に関し取引の公正を害する行為をしたとき又は取引の公正を害するおそれが大であるとき。
2 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
二 ・・・第四十七条・・・の規定に違反したとき。
三 前項又は次項の規定による指示に従わないとき。
3 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、第一項各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定・・・に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。
4 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
二 ・・・第四十七条・・・の規定に違反したとき。

上記の規定から明らかなように、不動産の営業マンが買主に対して手付金を貸し付けたり、分割払いの約束をした場合、宅建取引業者は行政処分を受ける可能性があります。
一度行政処分を受けてしまうと、会社への信用性が低下して、会社が被る不利益が大きいです。会社としては、従業員に対して行ってはいけない営業行為が何なのかを教えることも重要かと思います。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 辻悠祐