クーリングオフするための条件は何?

最終更新日: 2018年05月28日

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執筆: 弁護士 辻悠祐

前回の記事では、クーリングオフとはどのようなものか、クーリングオフの対象となる取引(特に訪問販売)についての説明を行いました。
今回の記事では、クーリングオフするための条件とは何かを説明していきます。

クーリングオフするための条件

その①:クーリングオフの対象取引であること

クーリングオフするためには、訪問販売・電話勧誘販売に係る取引・特定継続的役務提供に係る取引・訪問購入に係る取引・連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引にあたることが必要です。

その②:権利行使期間を経過していないこと

クーリングオフするためには、原則として、法定書面の受領日から8日(連鎖販売取引・業務提供誘因販売取引の場合は20日)以内であることが必要です。ただし、クーリングオフの妨害行為がある場合は、行使期間が延長されるので、この場合は、8日を過ぎてもクーリングオフできる可能性があります。クーリングオフの妨害行為とは、業者がクーリングオフの期間内であるにもかかわらず、クーリングオフができないなどと不実の告知を行い、消費者がそれを信じたような場合やクーリングオフしないように脅されたような場合などがそれにあたります。

法定書面とは、商品の種類や販売価格、代金の支払時期や方法、商品の引渡時期、クーリングオフに関する事項、事業者の氏名住所等、契約の申込み・契約締結を担当した者の氏名、契約の申込日・契約締結日、商品名・型、商品の数量などが記載された書面であり、クーリングオフに関する事項については赤枠の中に赤字で記載しなければいけない、書面の字は8ポイント以上であることが必要など、法定書面には細かな条件が決まっています。

なお、法定書面の受領がない場合や書面の記載事項に不備がある場合は、クーリングオフの起算日が開始せず、いつまでもクーリングオフが可能と解釈されています。

その③:適用除外規定に該当しないこと

下記に特定商取引法が適用除外となる場合について規定している条文を引用しています。すごいぶんりょうになるので、とりあえず概要をまとめると、

  • 事業者間の取引の場合
  • 海外にいる人に対する契約の場合
  • 国または地方公共団体が行う販売または役務の提供の場合
  • 他の法令で消費者の利益を保護することができると認められるもの

などについて、適用除外となっています。このような取引では、特定商取引法に基づくクーリングオフをすることは難しいです。

その④:書面によりクーリングオフに基づく解約の通知をすること

クーリングオフは書面で行う必要があります。クーリングオフの時期についての争いを避けるために、内容証明郵便でクーリングオフの通知を行うことをおススメします。

その⑤:対象商品の性質

クーリングオフの対象商品の代金の総額が3000円未満であるときはクーリングオフの対象外なので、クーリングオフができません。
また、消耗品(健康食品や化粧品等)を使用してしまった場合は、クーリングオフができないので注意が必要です。

次回について

次回の記事では、クーリングオフの対象取引としてイメージが湧きにくい。特定継続的役務提供に係る取引・連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引について簡単な説明をしたいと思います。

(参考条文)特定商取引法
(訪問販売における書面の交付)
第四条 販売業者又は役務提供事業者は、営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたとき又は営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたときは、直ちに、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない。ただし、その申込みを受けた際その売買契約又は役務提供契約を締結した場合においては、この限りでない。
一 商品若しくは権利又は役務の種類
二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
五 第九条第一項の規定による売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又は売買契約若しくは役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第二項、第四項又は第五項の規定の適用がある場合にあつては、当該各項の規定に関する事項を含む。)を含む。)
六 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

(訪問販売における契約の申込みの撤回等)
第九条 販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結した場合を除く。)若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客と商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合におけるその購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条から第九条の三までにおいて「申込者等」という。)は、書面によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等が第五条の書面を受領した日(その日前に第四条の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、販売業者若しくは役務提供事業者が第六条第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該販売業者又は当該役務提供事業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約又は当該役務提供契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合)においては、この限りでない。
2 申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面を発した時に、その効力を生ずる。
3 申込みの撤回等があった場合においては、販売業者又は役務提供事業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
4 申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、販売業者の負担とする。
5 販売業者又は役務提供事業者は、商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合には、既に当該売買契約に基づき引き渡された商品が使用され若しくは当該権利が行使され又は当該役務提供契約に基づき役務が提供されたときにおいても、申込者等に対し、当該商品の使用により得られた利益若しくは当該権利の行使により得られた利益に相当する金銭又は当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭の支払を請求することができない。
6 役務提供事業者は、役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合において、当該役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない。
7 役務提供契約又は特定権利の売買契約の申込者等は、その役務提供契約又は売買契約につき申込みの撤回等を行つた場合において、当該役務提供契約又は当該特定権利に係る役務の提供に伴い申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、当該役務提供事業者又は当該特定権利の販売業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができる。
8 前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 辻悠祐