法定相続人の範囲と法定相続分の計算

最終更新日: 2018年06月06日

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執筆: 弁護士 辻悠祐

法定相続人の範囲

相続人の範囲は、条文の通りです。
具体的には、

  • 被相続人(亡くなられた方)に子供がいる場合は、子供が相続人となります。子供が既に亡くなっている場合は、その下の代である孫、ひ孫などが相続人となります。これは代襲相続といいます。
      ↓子供などの直系卑属がいない
  • 被相続人に子供などの直系卑属がいない場合、被相続人の両親が相続人となります(両親がいない場合は、そのさらに上の代である祖父、祖母が相続人となります)。
      ↓直系尊属がいない
  • 被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。被相続人の兄弟姉妹が既に死亡している場合は、その兄弟姉妹の子供が相続人となります。ただし、直系卑属の場合と異なり、再代襲相続はされない点に注意が必要です(つまり兄弟姉妹の孫には再代襲相続をする権利がないことになります。ただし、昭和55年12月31日以前に開始された相続については、兄弟姉妹が相続人の場合でも再代襲相続の可能性はあるので注意は必要です)。

なお、被相続人の配偶者は常に相続人となり、相続分の割合については、民法900条で下記の通りに決められています。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

たとえば、被相続人に配偶者と子供3人がいる場合であれば、法定相続分は、配偶者が2分の1、子供は2分の1÷3人=6分の1ずつ相続することになります。この場合は、原則的に直系尊属である被相続人の両親や傍系血族である兄弟姉妹には相続しないことになります。

では、被相続人に配偶者と子供3人がおり、子供のうち一人が被相続人より先に死亡しており、死亡した子供には、被相続人からみて孫が3人いる場合はどのような計算になるでしょうか。計算としては、配偶者が2分の1、子供2人が6分の1ずつ、孫が6分の1÷3人=18分の1となります。

これまでの計算はまだシンプルですが、相続放棄や片親だけ血がつながっている兄弟(半血兄弟。異母兄弟・異父兄弟)、代襲相続、隠し子の存在などが複数絡めば、どんどん相続人の範囲の確定や計算などが複雑になってきます。たとえば、このようなケースでは計算が複雑になります。AとBの間に、子供a、bがおり、Aは以前にXとの間で、子供xを出産しており、既にABは死亡。その後、aが交通事故に遭って死亡してしまった。aには配偶者はいるが子供がいない場合、どのような計算になるかということ、法定相続分でいえば、
aの配偶者の法定相続分が4分の3、兄弟の法定相続分が4分の1となります。兄弟の状況としては、両親の血がつながっている兄弟bがおり、異父兄弟xもいる。父母の一方のみを同じくする兄弟の相続分は、双方同じくする兄弟の2分の1しか相続分はありません。よって、半血兄弟の姉妹の相続分の計算は、以下の方程式で求めることができます。

●各全血兄弟姉妹の相続割合  
2 /(2×全血兄弟姉妹の人数)+(半血兄弟姉妹の人数)
●各半血兄弟姉妹の相続割合  
1 /(2×全血兄弟姉妹の人数)+(半血兄弟姉妹の人数)
※方程式の理解の方法としては、
全血兄弟は、半血兄弟の2人分もらえるので、分母(兄弟の人数)のところで×2されている。
また分子レベルでは、全血兄弟は、半血兄弟の倍相続分があるので、2とされている。と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

よって、法定相続分は以下の通りとなります。

bの法定相続分は、
  分子:2      =2×1
  分母:(2×1)+1=3×4
  合計:12分の2
 xの法定相続分は
  分子:1
  分母:(2×1)+1=3×4
  合計:12分の1

以上のように、法定相続分の計算が複雑となるケースも考えられるので、よくわからないときはきちんと専門家に頼んで戸籍調査を行った上で、相続人の範囲の確定や法定相続分の割合の計算を行った方がいいと思います。

(参考条文)民法
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
(代襲相続人の相続分)
第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 辻悠祐