自動運転レベル4が可能になります!

最終更新日: 2023年01月26日

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執筆: 弁護士 辻佐和子

自動運転

1 はじめに

今年2023年4月1日より、改正道路交通法が施行されます。この施行で、一定の条件を満たした場合に、レベル4の自動運転を公道で適法に行うことが可能になります。また、小型の自動配送ロボットの交通ルールも整備されました。

新しく施行される、これらの自動運転に関する規制について解説します。

2 今回の改正によって規制が整備された自動運転

今回の改正法施行では、「特定自動運行」に関する規定と、「遠隔操作型小型車」に関する規定が施行されます。

「特定自動運行」

(ⅰ)特定自動運行とは

「特定自動運行」とは、以下①〜③の全てを満たした上で、自動運行装置を使って自動車を運行することです。
①自動運行装置の使用条件を満たしている
この使用条件は、自動運行装置ごとに国土交通大臣が付することになります。
②自動車が整備不良になったとき又は自動運行装置の使用条件を満たさないことになったときに、すぐに自動的に安全な方法で当該自動車を停止させることができる自動運行装置を使っている
③運行中の道路、交通及び当該自動車の状況に応じて当該自動車の装置を操作する者がいる場合に当たらない
なお、この特定自動運行は、道路交通法の「運転」には当たりません。

(ⅱ)自動運転レベルとは

「自動運転レベル4」と言いますが、ここでいう「レベル」とは何なのでしょうか。「官民I T S構想・ロードマップ2018」は、以下の定義を採用しています。
(例については、国土交通省の資料「自動運転のレベル分けについて」を参考に筆者の方で記載。)

今回新たに可能となるレベル4では、運行の監視主体が運転者からシステムに移ることになります。

レベル 概要 安全運転に係る監視、対応主体
運転者が一部又は全ての動的運転タスクを実行
レベル 0
運転自動化なし
運転者が全ての動的運転タスクを実行 運転者
レベル1
運転支援
システムが縦方向又は横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行
例:自動ブレーキ、車線からはみ出さない(LKAS)、前の車について走る(ACC)
運転者
レベル 2
部分運転自動化
システムが縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行
例:車線を維持しながら前の車について走る(LKAS+ACC)
運転者
自動運転システムが(作動時は)全ての動的運転タスクを実行
レベル3
条件付運転自動化
システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行
作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答
例:高速道路など一定条件下での自動運転モード機能
システム
(作動継続が困難な場合は運転者)
レベル4
高度運転自動化
システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行
例:限定地域での無人自動運転移動サービス
システム
レベル5
完全運転自動化
システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を無制限に(すなわち、限定領域内ではない)実行 システム

(ⅲ)特定自動運行を行うための手続き

特定自動運行を適法に行うには、公安委員会の許可を受けなければなりません。許可の申請をする際には「特定自動運行計画」を定めて提出する必要があります。
特定自動運行計画には、運行の経路や、運行を行う日・時間帯、運送される人又は物など、定められた事項を記載しなければなりません。
また、特定自動運行が許可された場合には、公安委員会によって、許可された人・法人の名前や運行の経路、運行を行う日・時間帯などが公表されます。

「遠隔操作型小型車」

遠隔操作型小型車とは、以下①〜③の全てを満たす車を指します。自動配送ロボットなどが想定されています。
①遠隔操作で通行させられる小型の車
②車体の大きさと構造が内閣府令で定められた基準に該当する
・車体の大きさの基準:長さ・幅・高さそれぞれについて以下を超えないことが必要です。
長さ…120cm
幅 …70cm
高さ…120cm(センサーなど、周囲の状況を検知する装置やヘッドサポートを除いた部分の高さ)
・構造の基準:以下の全てを満たすこと
原動機として電動機を用いること
時速6km以上の速さが出ないこと
歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと
③ 内閣府令で定める基準に適合する非常停止装置を備えている
以下の全てを満たす必要があります。
・押しボタン(車体の前方及び後方から容易に操作できるもの)により作動するものであること
・この押しボタンを簡単に識別できること
・作動時にすぐに原動機を停止させるものであること

遠隔操作型小型車を使用する人は、通行させる場所などを公安委員会に届け出なければなりません。
また、遠隔操作型小型車は、道路交通法で定める「自動車」「車両」には当たらず、「歩行者」となります。そのため、原則として歩道を通行することになります。

3 さいごに

2022年2月には、トヨタ自動車の自動運転車両「イー・パレット」の実証実験が行われ、同年9月には、ホンダが他2社と共同開発している自動運転車両「クルーズ・オリジン」のテスト走行を米国で行いました。実際に自動運転レベル4が身近になる日も遠くなさそうです。
そして、これまでになかった新しいサービスが登場するとともに、それによって、新しい問題も生じる可能性があります。
4月の施行後の自動車業界の動向については、これまで以上に注視していきたいと思います。

執筆: 弁護士 辻佐和子