来年の祝日はどうなる?祝日に関する気になるあれこれ

最終更新日: 2022年08月26日

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執筆: 弁護士 辻佐和子

1 2022年は祝日ラッキーイヤーでした

お盆も明けて涼しくなってきた今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。夏休みが恋しくなっている方もいらっしゃるかと思います。

お休みといえば、実は今年(2022年)は、全16日の祝日のうち、土曜日と被る日が元日の1日しかない年なんです。つまり、かなりの確率で祝日を休日にできたラッキーな年なんですね。

2 2023年の祝日は?

では、気の早い話ですが来年2023年の祝日はどうなっているのでしょうか?
 土曜日と被る2023年の祝日は以下のとおりです(2022年8月26日現在)。
・建国記念の日 2月11日(土)
・昭和の日 4月29日(土)
・秋分の日 9月23日(土)

うーん、16分の3…祝日という意味では普通の年になりそうです。

ところで、どのように祝日は決まっていて、なぜ休日扱いされているのか、疑問に思ったことはありませんか?せっかくなので、祝日について定めた法律をみてみましょう。

3 日本の暦が西暦になったのは〇〇時代

祝日についてみていく前に、まずは「祝日の基盤」、暦がどう定められたのか確認しましょう。

現在、私たちは当然のように西暦を使っていますが、日本はもともと旧暦を使っていたはず。太陽暦になったのはいつからなのでしょうか。

答えは、明治5年です。「明治五年太政官布告第三百三十七号(改暦ノ布告)」という法令により、明治5年12月3日(旧暦)が明治6年1月1日(太陽暦)となって太陽暦に切り替わりました。明治6年は1873年なので、実は来年(2023年)の元日で太陽暦採用150周年になります!

上の布告は太陽暦を採用した理由として、「旧暦だと2、3年に1度は閏月を置かなければならなくなって、同じ日付でも閏月を置く前後で季節がずれてしまい、不便である。一方で太陽暦ならば、同じ日付での季節のずれがなく、便利である。」としています。

ちなみに、明治5年は改暦のおかげで大晦日が無くなり、借金をしていた市井の人々は大変喜んだとかなんとか(昔は商人が“ツケ”の代金を回収するのが大晦日だったからです。)。

4 祝日を決めている法律

祝日の基盤(暦)がどう決まったかはわかりました。次は祝日そのものです。

祝日についてもこれを定めた法律がちゃんとありまして、その名も「国民の祝日に関する法律」(以下「祝日法」とします。)といいます。

(1)祝日はこの日!

祝日法第2条には、以下の16の祝日が定められています。

①元日(1月1日)年のはじめを祝う。
②成人の日(1月の第2月曜日)おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。
③建国記念の日(政令で定める日)建国をしのび、国を愛する心を養う。
④天皇誕生日(2月23日)天皇の誕生日を祝う。
⑤春分の日(春分日)自然をたたえ、生物をいつくしむ。
⑥昭和の日(4月29日)激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。
⑦憲法記念日(5月3日)日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。
⑧みどりの日(5月4日)自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。
⑨こどもの日(5月5日)こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。
⑩海の日(7月の第3月曜日)海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。
⑪山の日(8月11日)山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。
⑫敬老の日(9月の第3月曜日)多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。
⑬秋分の日(秋分日)祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。
⑭スポーツの日(10月の第2月曜日)スポーツを楽しみ、他者を尊重する精神を培うとともに、健康で活力ある社会の実現を願う。
⑮文化の日(11月3日)自由と平和を愛し、文化をすすめる。
⑯勤労感謝の日(11月23日)勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。

春分の日と秋分の日はそれぞれ、太陽が春分点と秋分点の上を通過する日になります。前年の2月1日に国立天文台の「歴要項 」が官報に掲載されることで日付が正式に決まります。

秋分の日の「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」という意味付けは、秋分の日の決まり方からは意外な気もします。これには仏教の考え方が関係しているそうで、阿弥陀如来の西方極楽浄土がある真西に太陽が沈むことから、秋分の日は特別にあの世と通じやすくなるとされてきた、それでこうした意味付けができた、という話です。

(2)祝日が「休日」になる根拠

祝日法第3条1項は、「『国民の祝日』は休日とする。」としています。この条文のおかげで上記の祝日は「休日」になっているわけです。

さらに、同2項は、「「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。」としています。振替休日ができる根拠もちゃんとここにあるんですね(残念ながら、土曜日と祝日がかぶっても振替休日が出てこない理由もここにあります。)。

ここで、「敬老の日と秋分の日は近いからかぶりそうだけど、祝日と祝日がかぶったらどうなるの?」と思われた鋭い方もいるかもしれません。ただ、少なくとも今後800年程度は、敬老の日と秋分の日がかぶることはないようです。なので、その2つがかぶる日までにはこの条文も改正されているかもしれません。

(3)労働法上、祝日を休みにしなくてもいい!?

ここで少しだけ労働法の話をしておきます。

祝日法が「祝日を休日にする」といったところで、労働条件に対する拘束力はありません。労働基準法は、使用者に対して毎週1日以上の休日を与えることを義務づけています(4週間を通じて4日以上でもOK)。これを守っていれば会社の休日を平日にしても、祝日に働かせても、違法ではありません。

(4)祝日法で「休日」にする意味はあるのか?

では、祝日法で祝日を「休日」と定めることに意味はないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。「行政機関の休日に関する法律」等が祝日法の「休日」を行政機関の休日の定義に使っていたり、民法が期間の満了について祝日法の「休日」が期間の末日となる場合の特則を定めていたり等、各法律に祝日法の「休日」は登場するのです。また、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」は、祝日法の「休日」をはじめ、土日や正月三が日、12月29日~大晦日の年末には死刑を執行しないことを定めています。

5 最近の祝日法の改正・特別法

(1)東京オリンピックのときは特別法で祝日移動

東京オリンピックが開催された2021年に3つの祝日が移動したのは記憶に新しいですね。

このとき祝日をどうやって移動させたかといいますと、「令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」の中に「国民の祝日に関する法律の特例」という形で祝日法の例外規定を置いたのです。この条項は「令和三年の国民の祝日に関する祝日法の規定の適用については…」として、令和3年限定で祝日が移動するような書き方になっています。なので今年以降の祝日は、祝日法に定められた元の日付に自動的に戻りました。

(2)上皇陛下がご退位されたときは祝日法の一部改正

上皇陛下が天皇をご退位されるための準備として、平成29年には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立・施行されました。この法律の附則で、祝日法の一部を改正して2月23日を天皇誕生日とすることが定められていたのです。これによって施行日の令和元年4月30日以降は天皇誕生日が2月23日となりました。

6 さいごに

第2条、第3条はご紹介してきましたが、実は祝日法の第1条も結構いいことを言っています。
「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。」

↑祝日ってこんなに素晴らしいものなんですね!
次の祝日は2022年9月19日の敬老の日。私もその日は自由と平和を求めながら祖母・祖父に電話をかけつつ、800年後の敬老の日について少しだけ思いを馳せたいと思います。

執筆: 弁護士 辻佐和子