建物明渡認容判決を得た後の強制執行の流れ

最終更新日: 2023年02月24日

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執筆: 弁護士 川田啓介

弁護士の川田啓介です。
最近、建物賃貸の解除などで明渡しを認める旨の判決を獲得した後の法的手続がどうなるのかについてご質問いただくことが多いため、今回は判決後の強制執行という手続の流れについて簡単に解説したいと思います。
建物明渡判決後の強制執行

判決を獲得しただけでは相手を追い出せない?

例えば建物賃貸の明渡請求事件において、長い時間をかけてようやく裁判所から「借主は建物を明け渡せ。」といった判決を得たとしても、その判決を錦の御旗に賃貸人が当該物件に立ち入って賃貸人を出て行けと引っ張り出したり、荷物を強制的に出したりすることはできないのです。
賃貸人としては、強制執行という法的手段を用いて、自己の権利を実現していくことになります。強制執行手続は、勝訴判決を得たり、相手方との間で裁判上の和解が成立したにもかかわらず、相手方がお金を支払わなかったり、建物等の明渡しをしなかったりしたときに、判決などの債務名義を得た人の申立てに基づき、相手方に対する請求権を裁判所が強制的に実現する手続のことを指します。

強制執行申立ての必要書類

強制執行に必要となる主な書類は以下のとおりです。
①債務名義
②執行文
③送達証明書

それぞれについて説明します。
①の債務名義とは、給付請求権の存在と内容を表示している国が公に認めた文書(民事執行法22条)のことをいいます。たとえば、確定判決や和解調書などがこれに当たります。
②の執行文とは、債務名義の執行力が現存することおよび執行力の内容(存在及び範囲)を証明する公証文言のことをいいます。申立人が相手方に対し、その債務名義によって強制執行することができる旨を、裁判所書記官や公証人といった執行文付与機関が債務名義の正本の末尾に付記する方法で付与します(民事執行法26条2項)。平たく言うと、債務名義に強制執行の効力を持たせるために要求される手続が執行文の付与です。
③の送達証明書とは、①債務名義や②執行文が、強制執行の開始に先立って、または執行開始と同時に相手方に送達されていることを示す書面です。

強制執行の申立てへ

必要書類をそろえたら、強制執行の申立てを賃貸物件の所在を管轄する地方裁判所の職員である執行官と呼ばれる人に対して行います。
申立てがなされた後、執行官は目的物件の相手方が実際に居住するなどして占有しているかを確認したうえで引渡期間及び強制執行実施予定日(断行日)を催告し、相手方が断行日までに任意の明渡しをしない場合には、執行官は断行日において執行場所に出向いて建物内の物品を除去し、居住者を退去させて、空き家の状態にすることで申立人に引き渡します。
以上の流れで強制執行は行われます。

まとめ

今回は判決獲得後の強制執行の流れについて解説しました。
今後も不動産にまつわる疑問点の解説に努めたいと思います。

執筆: 弁護士 川田啓介

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