民法改正~保証契約の特則が新設~

最終更新日: 2020年05月13日

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執筆: 弁護士 辻悠祐

保証契約は、主債務の存在、主たる債務者がその債務を履行しないときに保証人がその履行をするという合意(保証契約の存在)、保証契約が書面でなされれば、契約としては有効なのが原則です。

しかし、実際には、安易に保証人となってしまい、保証人が予期していなかった不測の損害を被ることが多くありました。

そこで、今回の民法改正では、特にそのようなケースが多かった「事業に関する債務を主債務とする個人の保証」について、下記のとおり、要件を厳格化しました。

(公正証書の作成と保証の効力)
第四百六十五条の六  事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2 前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
  ・・・
3 前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。

つまり、事業に関する債務を主債務とする個人の保証の場合は、保証契約が書面でなされるだけでは足りずに、公正証書の作成が必要になったということです。

では、会社の債務について、会社の代表者が連帯保証人となるケースでも公正証書の作成は必要なのでしょうか。
回答としては、そのようなケースでは公正証書の作成は必要ではありません。
下記のとおり、例外的なルールが定められています。

(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外)
第四百六十五条の九 前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。

  • 一 主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者
  • 二 主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者
    • イ 主たる債務者の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者
    • ロ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
    • ハ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
    • ニ 株式会社以外の法人が主たる債務者である場合におけるイ、ロ又はハに掲げる者に準ずる者
  • 三 主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者

公正証書の作成が必要とされた経緯としては、保証を頼まれた場合に人情や義理からどうしても断り切れない、また、どれくらいのリスクがあるのか保証人が予測しづらいことから、保証契約が有効に成立するためには、慎重な手続を経ようとした点にあります。

上記のような会社の経営に深く関わっているようなものであれば、そのリスクはある程度予測でき、公正証書の作成など慎重な手続の対象から外しても問題ないため、公正証書の作成の適用除外とされたわけです。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 辻悠祐