民法改正~危険負担の原則が変更された~
1. 2020年4月1日より改正民法が施行
2020年4月1日より改正民法が施行されました。明治時代の制定以来約120年ぶりの大幅な見直しです。
今回は、改正法の内容のうち、危険負担について解説します。
2. 危険負担とは?
危険負担とは、契約後に「売主や買主のどちらにも責任がない理由(地震や台風など)」で商品が引渡し前に滅失するなどして、履行不能(契約の目的を果たせなくなること)となった場合に、そのリスクを当事者のどちらが負うかというルールのことです。
3. 民法改正前の具体例
太郎さん(売主)が自己所有の建物を次郎さん(買主)に売却するとします。
売買契約成立後、太郎さんが次郎さんに建物を引き渡す前に落雷で建物が焼失してしまった場合、次郎さんは太郎さんに売買代金を支払う必要があるのでしょうか?
落雷で建物は焼失しており、当事者双方に責任はありません。一般的な感覚では、次郎さんは建物の引渡しを受けられない以上、代金を支払う必要はないように思えます。
しかし、これまでの民法の原則では、このようなケースでは次郎さんは太郎さんに建物の売買代金を支払う必要がありました。このような原則を債権者主義といいます。建物の引渡請求権の視点で考えると、買主である次郎さんが債権者として危険を負担するという意味です。
(債権者の危険負担)
第五百三十四条 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
実際は、契約書で債権者主義のルールを修正するケースが多くありました。しかし、契約書がないケースでは、このような債権者主義が適用される可能性がありました。
4. 民法改正によるルール変更
商品を受け取れないにもかかわらず代金を支払うというのは酷であるという理由から、改正民法では双方の責任なく商品が滅失した場合、代金の支払義務はなくなるという債務者主義に変更されました。
第五百三十六条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
5. 契約書の内容を確認しましょう
危険負担のルールは当事者間で合意すれば変更できます。契約書に署名・捺印する前には、危険負担のルールを念のため確認しましょう。
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執筆: 弁護士 辻悠祐