民法改正~要物契約から諾成契約へ~

最終更新日: 2020年05月15日

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執筆: 弁護士 辻悠祐

契約が有効に成立するためには要件があります。
諾成契約とは、当事者の申し込みと承諾という意思表示の合致で契約が有効に成立する契約類型のことです。たとえば、売買契約が典型です。

民法改正で諾成契約へ

要物契約とは、意思表示の合致のほかに、目的物の引渡しが契約を有効に成立させるための要件となっている契約類型のことです。たとえば、消費貸借契約が典型とされてきました。つまり、消費貸借契約では、返還約束だけでは契約は有効には成立せずに、実際に金銭や物を交付することで契約が有効に成立するということです。
改正前の民法では、このような要物契約の類型がたくさんありました。

しかし、今回の民法改正で、要物契約とされていた契約類型がたくさん諾成契約に変更されました。下記をご覧ください。消費貸借契約については、原則的に要物契約ですが、例外的に、書面でする消費貸借契約は諾成契約となりました。実際には、消費貸借契約は書面でなされることが多いと思うので、多くの消費貸借契約が諾成契約になったといえます。

(代物弁済)
第四百八十二条  弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
(消費貸借)
第五百八十七条  消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(書面でする消費貸借等)
第五百八十七条の二 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。

3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。

4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。

(使用貸借)
第五百九十三条  使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
(寄託)
第六百五十七条  寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 辻悠祐