農学部の思い出と冷凍ムツゴロウ

最終更新日: 2023年02月28日

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執筆: 弁護士 辻佐和子

1 牧場実習

牧場に泊まり込んで研修を受けます。牛の直腸検査をやったり、腸詰め(ウインナー)を作ったり、ヤギ小屋を掃除したりと盛りだくさんでしたが、中でもちょっと感動したのが肥料でした。牛の糞を高温で発酵させてサラサラにした肥料なのですが、不思議と近づいても臭くありません。完全に発酵しているからだそうです。

なるほど~と思っていたのですが、気が付けば私たちは牛糞堆肥でいっぱいのバケツを持たされ、牧草地の真ん中に立っていました。
「さあ撒いて!」と言われ、手で牛糞堆肥を振りまきます。折しも強風が吹き始め、撒いた堆肥が全部舞い上がり、それを全身に浴びる形になりました。最後の方はもう皆やけくそでバケツをひっくり返して撒いており、全て終わる頃には全員の顔と作業着がうっすら茶色くなっていました。その日の夕飯はカレーでした。

2 農場実習

半年間毎週1回、田無にある農場に通います。コメや野菜、果物を育てたり収穫したりしました。桃やきゅうり、トマトなどの農産物をお土産にもらったり、農場でマヨネーズをつけて食べたりもして良い思い出です。

田植えのときは友人が田んぼに顔から突っ込んでしまって大変だったり、同期作曲のコメの歌も歌ったりと、なかなか忙しかったです。

3 臨海実習

浜名湖にある大学の研究施設に泊まり込んで研修を受けます。浜名湖に船で漕ぎ出して水の透明度を測ったり、湖底の砂を採取したり、実験水槽を見学したり、魚を3枚におろしたりしました。釣りもしました。うなぎは食べたかどうか覚えていませんが、食べたということにしておきます。

そして経緯は忘れましたが、外海が見えるところまでみんなで行って、太平洋に向かって「太平洋〜〜〜!!!」と叫ぶという、今時は小学生男子もやらないようなことをやってみてめちゃくちゃ楽しかったです。

4 森林実習

静岡にある大学の施設で泊まり込みの研修を受けました。ロッジみたいな素敵な建物に泊まった気がしますが、きっとかなりの思い出補正が入っています。

丸太を製材する過程を見学したり、薪割りをしたり、自分たちで釜を作って火を起こしてピザを焼いたりしました。ちょっと焦げたけど美味しかったあのピザの味は忘れません。
あと、「ここから落ちたら軽傷じゃすまなそうだな~」といった感じの崖沿いの山道を必死で歩いていました。無事でよかったと思います。

5 ベトナム海外実習

学科の目玉となる実習です。ベトナム南部、ホーチミンに泊まって研修を受けます。
農家さんの循環型農業を見学したり、現地の大学教授の講義を聞いたり、学生と交流したり、マングローブ林に入って行ったりしました。街中ではベトナムの人々が1台のバイクに3人も4人も乗って移動していたので、日本の道交法を遵守していた私たちにとってはかなりの驚きでした。

ある日、女子数名で現地の人が行くような脇道の屋台に入り、ビールケースのような椅子に座って、膝より低い台で焼き飯を食べていました。すると私の視線の先、他のお客さん越しに、皿を洗っている女性が見えました。ついしっかり見てしまったのですが、「その水はいつ取り替えたのですか?」と聞きたくなるくらい濁ったタライの水にジャブっと皿をくぐらせていただけで「洗い終わって」いたようでした。その翌日、私だけお腹を下してホテルで休んでいました。やはり気持ちの問題ってありますよね。

自由時間には女子勢で手回し式(?)のプリクラを撮ってみたり、アオザイ(ベトナムの民族衣装)を買ってみたりと、なんとも大学生らしく過ごせました!

6 卒業論文

4年次から研究室に配属されるのですが、私は「国際水産開発学研究室」に所属しました。港に漁の見学に行ったり、飲み会で鯨肉を食べたり、謎の深海魚を焼いて食べてみたり(「だいたいのモノは焼けば食える!」というのが研究室の先輩の持論でした。)、いろいろ経験させてもらいました。

卒業論文の題は「楕円フーリエ主成分分析を使った画像による魚種判別の可能性」です。なんだか格好よく聞こえませんか?

あるとき、私のこの卒論の進捗状況を心配した先輩が、長崎の学会から戻るや否や「これあげるからサンプルに使って」と言って「サンプル」なるものをくれました。それは諫早湾で先輩が手ずから捕獲したムツゴロウをペットボトルに入れて冷凍させたもの(やや腐敗している)で、決して喜んで触りたいものではありませんでしたが、言われたとおり、解凍してヒレを固定したりしてしっかりサンプルとして使わせていただきました。おかげ様で卒業できたので感謝しきりです!

世界広しといえども、牛糞を全身に浴び、旅のお土産に腐った冷凍ムツゴロウをもらったことのある弁護士は私だけだと自負しています。

7 さいごに

実習だけでなく座学もきっちりやっていましたが、思い出に残っているのはやはりこうした実習です。いい思い出がたくさんできました。
国際開発農学は楽しいところです。今でも同期とは連絡を取り合っていますし、生まれ変わってもまた農学部に行きたいと思います。

執筆: 弁護士 辻佐和子