民法改正~保証契約の特則が新設~
1. 2020年4月1日より改正民法が施行
2020年4月1日より改正民法が施行されました。明治時代の制定以来約120年ぶりの大幅な見直しです。
今回は、改正法の内容のうち、保証契約の特則について解説します。
2. 保証契約とは

保証契約とは、お金を借りた人(主債務者)が返済できなくなった場合に、代わりにその責任を負う人(保証人)が支払うことを約束する契約です。
保証契約は、次の要件を満たせば原則として有効です。
② 主たる債務者がその債務を履行しないときに保証人がその履行をするという合意(保証契約の存在)
③ 保証契約が書面でなされていること
3. 事業に関する借入れの保証は公正証書が必要
もっとも、安易に保証人となり、予期せぬ損害を被る事案が多くありました。
そこで、今回の民法改正では、「事業に関する債務を主債務とする個人の保証」について、次のとおり公正証書の作成を必要とし、要件を厳格化しました。
第四百六十五条の六 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
2 前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
(略)
3 前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。
つまり、事業のために借り入れたお金(貸金等債務)を主債務とする個人の保証の場合は、保証契約が単に「書面」でなされるだけでは足りず、原則として「公正証書」の作成が必要になりました。
なお、事業に関わるものであっても、オフィスの賃貸借契約の保証や、商品の買掛金の保証などは対象外です。
4. 会社の代表者が保証人となる場合
では、会社の債務について、会社の代表者が保証人となるケースでも公正証書の作成は必要でしょうか?
結論としては、「会社の債務について会社の代表者が保証人となるケース」では公正証書の作成は不要です。
改正民法では、次のとおり、例外的なルールが定められています。
第四百六十五条の九 前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。
一 主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者
二 主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者
イ 主たる債務者の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者
ロ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
ハ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
ニ 株式会社以外の法人が主たる債務者である場合におけるイ、ロ又はハに掲げる者に準ずる者
三 主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者
そもそも、個人の事業保証において公正証書の作成が必要とされた背景には、主に次のような理由があります。
① 保証人を頼まれた場合に人情や義理からどうしても断り切れない。
② どれくらいのリスクがあるのか保証人が予測しづらい。
もっとも、会社の経営に深く関わっている場合、そのリスクはある程度予測でき、公正証書の作成など慎重な手続の対象から外しても問題が少ないため、公正証書の作成の適用除外となりました。
5. 保証人になる場合は慎重に
「保証人になったために土地建物を失うことになりそう」「保証人になったために破産することになってしまった」という相談が法律事務所に持ち込まれることがあります。
「保証人にならなければよかった」と後日思っても手遅れです。保証人になる場合、リスクを慎重に踏まえて署名・捺印をしましょう。
執筆: 弁護士 辻悠祐