民法改正~時効期間の改正~
たとえば、運送賃に関する債権や旅館・料理店・飲食店の債権は1年、生産者・卸売商人・小売商人が売却した産物・商品の代価に関する債権は2年、医師の診療・助産師の助産・薬剤師の調剤に関する債権は3年、(商法ですが)商人の取引は5年で消滅時効になるなど時効のルールがたくさんあってとにかくややこしい状態でした。
しかし、そもそも消滅時効の期間にこのような差を生じさせる合理的な理由はありません。そこで、改正民法では、短期消滅時効(改正前170~174条)や商事消滅時効(商法522条)の条文を削除して、下記のとおりなるべくシンプルにしました。
たとえば、債権でいうと、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しない、もしくは権利を行使できることを知らなくても、客観的に権利行使可能な時から10年間行使しないときは時効によって消滅するとしました。
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
もっとも、すべての債権が上記のルールで運用されるわけではありません。たとえば、確定判決がある場合は、時効期間は10年となります(民法169条)。
また、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、原則として、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときに消滅時効の期間にかかります(民法724条)。少しややこしいのは、不法行為による損害賠償請求権の中でも、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効については、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときに消滅時効の期間にかかるとされています(民法724条の2)。
そのため、たとえば、交通事故のケースだと、車両の修理代等の物損は、3年で消滅時効の期間にかかりますが、治療費等のお怪我の部分については、消滅時効の期間が5年となります。
時効期間については依然ややこしい部分があるので、悩まれた場合は弁護士にご相談ください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。
執筆: 弁護士 辻悠祐