東京ミネルヴァ法律事務所の破産～法律事務所が破産する原因とお客様が取るべき行動

1. 2020年6月24日に破産手続開始決定

2020年6月24日、裁判所は弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所に対して、破産手続開始決定を出しました。

2. 法律事務所が破産する原因

では、法律事務所が破産する原因にはどのようなものがあるでしょうか？

一番多い原因は、預り金の未返金です。

法律事務所は預り金として数億円単位を預かることがあります。相続や交通事故などで多額の預り金が発生することが多いです。

また、過払い金返還請求をしている場合、過払い金を法律事務所預り口口座に振り込むよう指定することが多いです。

そのため、お客様に返金するはずの預り金の未返金で負債が増えることがありえます。
　　
第一東京弁護士会の会長談話では「当会による調査の結果、回収した過払金等の保管状況に不明な点があり、依頼者に返還することが困難な状況に陥っている疑いがある」とのことです。

3. 本当に怖い非弁提携

弁護士個人の倫理観がないために、預り金の横領などに至ることもあります。

一方、非弁提携により預り金の横領などに至ることもあります。非弁提携とは、弁護士以外の者が実質的に法律事務所を経営しているような状態です。トラブルが起きやすいと言われています。

非弁提携が疑われる事務所には相談や依頼をしないほうがよいです。

4. 弁護士の預り金に対する不信感の増長

どの業界にも社会の常識とは異なる慣行があります。

弁護士業界では当然の慣行ですが、社会の目から見ると不思議なルールが預り金です。

今後、預り金の原則禁止、お金を預かる場合の規制の強化等が予想されます。弁護士に対する不信感を持たれないための対策が必要です。

5. お客様が取るべき行動

では、依頼をしていた法律事務所が破産してしまったとき、お客様はどのような行動を取るべきでしょうか？

まずは、依頼している案件の進み具合を確認することが必要です。特に、次のようなときは緊急性が高いので要注意です。
① 債務整理の弁済代行を依頼しているとき
② 時効期間の経過が迫っているとき
③ 裁判の不服申立て期限が迫っているとき

① 債務整理の弁済代行を依頼しているとき

債務整理の分割払いについて、お客様が法律事務所にお金を預けて、法律事務所が貸金業者に弁済を代行することがあります。

お客様が法律事務所にお金を預けたとしても、法律事務所が貸金業者に本当にお金を支払っていないと未払になってしまいます。

分割払いを怠ると、残金の一括払いとなってしまったり、遅延損害金がついてしまったりすることがありますので要注意です。

② 時効期間の経過が迫っているとき

交通事故、過払い金返還請求などでは、時効期間等の期間制限があります。その他の権利についても時効期間があります。

一定の期間内に請求をしないと権利がなくなってしまうことがありますので要注意です。

③ 裁判の不服申立て期限が迫っているとき

裁判にも色々な期間制限があります。典型的な期間制限は控訴や上告などの不服申立の期間制限です。

期間を過ぎてしまうと不服申立ができなくなりますので要注意です。

6. まとめ：心配なことは別の弁護士に相談

法律事務所が破産するというのは珍しいパターンです。そのため、依頼した法律事務所にトラブルが発生した場合、心配なことがたくさんあるはずです。

心配なことがあるときは、別の法律事務所の弁護士に相談してみましょう。解決のヒントが見つかるかもしれません。

執筆: 弁護士 大澤一郎