どこからどこまでが暴行なのか?暴行の範囲
1. 暴行罪になるかどうか?
よくニュースなどで「暴行罪」という言葉が出てきます。では、何をすると「暴行」になるのでしょうか?
拳で相手の顔面を殴りつけたような場合、暴行したことは明らかです。
では、部屋の中で刀を振り回した場合や、無言電話を多数かけて相手を不安に陥れたような場合は、暴行したといえるのでしょうか?
今回は、暴行罪について解説します。
2. 暴行とは?

「暴行」という用語には、法律上様々な意味があります。暴行という用語が使われる場面によってその意味が異なります。
たとえば、強盗罪であれば、相手が反抗することが難しい程度の暴行が求められます。公務執行妨害罪であれば、警察のパトカーに石を投げつければ、たとえその石が警察官の身体に直接当たらなくても、暴行になります。
3. 暴行罪における「暴行」の意味
では、暴行罪における「暴行」とは、どのような意味でしょうか?
暴行罪における暴行とは、「人の身体に対する不法な有形力の行使」と定義されています。
「有形力の行使」とは、物理的な攻撃を加えた場合を意味すると考えてよいでしょう。典型例としては、殴る、蹴る、引っ張るなどの行為です。
4. 部屋の中で刀を振り回す行為は「暴行」に当たる
部屋の中で相手の身体に向けて刀を振り回し、相手に刀が当たらなかった場合、身体接触がなくても暴行罪が成立するのでしょうか?
この点について、一般的には、物理的な攻撃を加えているものとして、暴行罪が成立します。
暴行の定義は、「有形力の行使」であり、物理的な接触までは求められていません。相手の身体に向けて刀を振り回している場合であれば、刀による物理的な危険性が身体に向けられており、身体に対する有形力の行使といえるため、一般的には暴行に当たるといえるでしょう。
ただし、相手の身体に向けて有形力を行使しているかどうかは、具体的な判断が必要です。
たとえば、狭い部屋で刀が当たりそうな距離で振り回す行為は「暴行」と評価されます。一方、広い部屋で十分距離がある状況で刀を振り回したとしても、身体に向けて有形力を行使したとは判断されにくく、「暴行」と評価されないでしょう。
5. 無言電話を多数かけて不安に陥れる行為は「暴行」に当たらない
では、無言電話を多数かけて相手を不安に陥れる場合、暴行罪は成立するでしょうか?
無言電話を多数かけて不安に陥れるような行為は、物理的な攻撃を加えたとはいえません。そのため、暴行とは言えず暴行罪は成立しません。
しかし、無言電話を多数かけて相手をノイローゼにさせたような場合は、傷害罪が成立する可能性があります。
6. まとめ:個別事情によるため判断は慎重に
暴行罪が成立するかどうかは、似たような行為であっても個別の事情によって判断が異なります。万が一トラブルになった際の警察への対応は、慎重に進める必要があります。
執筆: 弁護士 辻悠祐