ペットのトラブルについて

最終更新日: 2017年12月25日

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執筆: 弁護士 松本達也

犬に噛まれた場合

最近では、日本人家族の実に3世帯に1世帯がペットを飼っているともいわれており、ペットの増加に伴ってペットに関する法律相談も増加しています。私自身も犬を飼っているのですが、ペットに関するトラブルに巻き込まれたことがあります。トラブルに巻き込まれた当時は、どのように対応すれば良かったのかがわからず、大変混乱したのをよく覚えています。そこで、今日はその経験から、ペットのトラブルに巻き込まれたときにどのようにすべきかを当時の状況に照らして改めて考えてみたいと思います。

ある日私は、愛犬と一緒にいつもの散歩コースを散歩していました。すると突然、大型犬が家から飛び出してきて私は背中を噛まれてしまいました。飼い主の話によると大型犬を家の中に入れようとして鎖を外そうとしたところ、扉が開いていたことから、そのまま外に飛び出してしまったということでした。私は、背中に怪我を負いました。

ペットは日本法上権利の客体とはなりえないため、ペットから治療費をとることや、ペットを傷害罪で逮捕することはできません。そのため、飼い主に責任があることになります。
民法は動物の占有者(飼い主)の責任として718条1項に、「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。」と定めています。

先ほどの事例をこの条文に照らして考えると、大型犬の飼い主は、大型犬を相当の注意をもって管理したといえないのであれば、人に噛みついて生じた損害を賠償しなければならないということになります。大型犬のあごの力はとても強く、本気で噛みつけば人の腕を容易に食いちぎることができるといわれています。そのような大型犬の性質に照らすと、鎖を外す際には飼い主のコントロールができる状態で安全に鎖を外す必要があったといえます。そのため、外に飛び出ることが容易な状態で鎖を外していた飼い主は相当の注意をもって管理したとは言えないことになります。とすると飼い主は、私に生じた損害について賠償する責任があるということになります。

このように、ペットを飼うと、そのペットが発生させたトラブルについても飼い主が責任を取らなければならないという事態が生じます。そしてペットが、誰かを傷つけたのであれば、その治療費を支払わなくてはなりません。また、仮にけがをさせてしまいその人に後遺症が残ってしまった場合は、その後遺障に対しても損害を賠償しなければならないことにもなります。

仮に、あなたが、犬に噛まれた場合は、飼い主の連絡先をしっかりと聞くこと、その犬が狂犬病等の予防接種を受けているかを飼い主に確認すること、病院に行き抗生物質を注射してもらうことは最低限行うべきです。私は飼い主の連絡先は聞いていたのですが、狂犬病や抗生物質のことは頭にありませんでした。噛まれた後インターネットで調べてこのことを知り、すぐに飼い主に確認しました。

人を噛んでしまったとしてもそれは犬自身が悪いとは言えません。大切な家族であるペットを加害者にしないために、今一度ペットを飼っている皆さんには、散歩する際や、鎖を外す際に家から飛び出す恐れがないかなどを確認していただけたらと思います。私自身も、散歩の際にはこのトラブル以来、ドアを開けたまま鎖は外さない、首輪とリードがしっかりつながっているかを事前に確認することを徹底しています。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 松本達也