遺言があっても遺留分は請求できる?
1. 遺留分とは?
相続のご相談で「遺言があるから遺留分の請求は無理ですか?」といったご質問をいただくことがあります。
遺留分(いりゅうぶん)とは、簡単に言えば相続人に最低限認められた遺産の取り分です。
今回は、有効な遺言書があったときに、遺留分との関係はどうなるのかを弁護士が解説します。
2. 遺留分の内容
遺留分は法定相続分の2分の1が原則です。
たとえば、被相続人(亡くなった人)の配偶者の法定相続分は遺産の2分の1ですので、そのさらに2分の1である4分の1が遺留分です。
3. 遺言と遺留分の関係
具体的な事例で考えてみましょう。たとえば、3人家族(夫A、妻B、息子C)において、夫Aが亡くなった場合です。
夫Aは有効な公正証書遺言で「Aの財産は息子Cにすべて相続させる。」旨の遺言を作成していたとします。
この時、妻Bは遺留分として、遺産の4分の1について遺留分の権利を行使できるのかという問題が生じます。遺言と遺留分のどちらが優先するのかという問題です。
結論としては、妻Bは遺留分の行使をすることができます。法律上、遺留分の権利は遺言に優先するからです。
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4. 遺留分の権利行使をするときの注意点
遺留分を主張するときの一般的な注意点は次のとおりです。
① 権利行使には期間制限がある
相続開始と遺留分の侵害を知った時から1年、または相続開始から10年が請求できる期間です。早めに請求しましょう。
② 権利行使は法律上は口頭でもできる
法律上は権利行使の要件は決まっていません。口頭でも請求できます。ただし、言った言わないの問題を避けるため、内容証明郵便で通知をするのが一般的です。
③ 遺留分の請求ができる人に制限がある
遺留分を請求できるのは、被相続人の配偶者や子(場合によっては孫など)、直系尊属(親など)に限られます。兄弟姉妹には遺留分の請求権はありません。
④ 話し合いで解決できなければ裁判所で解決する
話し合いで遺留分の問題が解決できれば一番簡単です。もっとも、遺留分は深刻な争いとなることも多く、話し合いでの解決が難しいこともあります。
話し合いで解決できないときは、最後は裁判所が判決をすることにより解決します。
⑤ 遺留分は請求してもしなくてもよい
当たり前かもしれませんが、遺留分は請求してもしなくてもどちらでも大丈夫です。故人の遺言書の内容を尊重して、遺留分の請求はしないということも多いです。
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5. 遺言書の形式ミスに注意
遺留分は、有効な遺言書を前提とすることが多いです。
遺言書には、大きく次の2つがあります。
① 公正証書遺言
② 自筆証書遺言
公正証書遺言は公証役場で作成するので、手続きに間違いが発生しにくいです。一方、自筆証書遺言は手書きの遺言書なので、手続きに間違いが発生しやすいです。
遺言書の手続きに間違いがあると、有効な遺言書となりません。そのため、遺言書を作成するときは公正証書遺言の作成をおすすめします。また、自筆証書遺言を作成するときは専門家に確認をしてもらうことをおすすめします。
6. 悩んだら専門家に相談
遺留分は計算が複雑です。適切な判断をするには法的な専門知識が求められることが多いです。
遺留分の問題に悩んだときは、はやめに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
執筆: 弁護士 川田啓介