動物病院の広告を出すときの注意点②

最終更新日: 2022年01月25日

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執筆: 弁護士 松本達也

1 はじめに

前回のブログでは、動物病院が広告を出す際の獣医療法上の広告規制についてご紹介させていただきました。今回のブログでは、広告が制限されている事項と、例外的に広告が可能な事項をご紹介させていただきます。

2 広告が制限されている事項

⑴ 「技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならない。」
前回ご紹介の通り、獣医療法第17条によって、何人も、獣医師(獣医師以外の往診診療者等を含む。第二号を除き、以下この条において同じ。)又は診療施設の業務に関しては、獣医師又は診療施設の専門科名、獣医師の学位又は称号を除き、その技能、療法又は経歴に関する事項を広告してはならないとされています。
例えば、仮にペットが骨折した場合に、「当院では必要に応じて手術を行い治すことが出来ます」という記載があった場合、これは、その技能、療法に関する広告に該当するため、認められないということになります。後述のとおり、手術に関して記載可能なのは、犬猫の去勢手術のみという規制となっています。

⑵ 獣医療法施行規則24条2項による制限
   獣医療法施行規則24条1項によって、例外的に広告が可能となる事項もありますが、同条2項によって、下記のような制限があります。
ア 提供される獣医療の内容が他の獣医師又は診療施設と比較して優良である旨を広告してはならないこと。
イ 提供される獣医療の内容に関して誇大な広告を行ってはならないこと。
ウ 提供される獣医療に要する費用を併記してはならないこと。

例えば、狂犬病のワクチンは、当院は〇〇円という低価格で対応しますなどという表現は、狂犬病の予防接種を行うこと自体は、後記の通り、例外的に広告として許容されるものの、「提供される獣医療に要する費用を併記してはならない」という規制によって認められません。

3 例外的に広告が認められる事項

⑴ 獣医療法施行規則24条2項によって認められるもの
下記に記載した12個については、獣医療法17条2項によって、例外的に広告制限の特例となり、広告を行うことが可能となる。

(広告制限の特例)
第二十四条 法第十七条第二項前段の農林水産省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)第六条の獣医師名簿への登録年月日をもって同法第三条の規定による免許を受けていること及び第一条第一項第四号の開設の年月日をもって診療施設を開設していること。
二 医薬品医療機器等法第二条第四項に規定する医療機器を所有していること。
三 家畜改良増殖法(昭和二十五年法律第二百九号)第三条の三第二項第四号に規定する家畜体内受精卵の採取を行うこと。
四 犬又は猫の生殖を不能にする手術を行うこと。
五 狂犬病その他の動物の疾病の予防注射を行うこと。
六 医薬品であって、動物のために使用されることが目的とされているものによる犬糸状虫症の予防措置を行うこと。
七 飼育動物の健康診断を行うこと。
八 家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号)第五十三条第三項に規定する家畜防疫員であること。
九 家畜伝染病予防法第二条の三第四項に規定する家畜の伝染性疾病の発生の予防のための自主的措置を実施することを目的として設立された一般社団法人又は一般財団法人から当該措置に係る診療を行うことにつき委託を受けていること。
十 獣医療に関する技術の向上及び獣医事に関する学術研究に寄与することを目的として設立された一般社団法人又は一般財団法人の会員であること。
十一 獣医師法第十六条の二第一項に規定する農林水産大臣の指定する診療施設であること。
十二 農業保険法(昭和二十二年法律第百八十五号)第十一条第一項に規定する組合等(以下「組合等」という。)若しくは同条第二項に規定する都道府県連合会から同法第百二十八条第一項(同法第百七十二条において準用する場合を含む。)の施設として診療を行うことにつき委託を受けていること又は同法第十条第一項に規定する組合員等の委託を受けて共済金の支払を受けることができる旨の契約を組合等と締結していること。

4 「技能又は経歴にかかわらないとして広告が可能なもの」

以下の事項は、技能又は経歴にかかわらないものであるため、広告が可能となる。
(例)
・ 診療施設の開設予定日
・ 診療施設の名称、住所及び電話番号
・ 勤務する獣医師の氏名
・ 診療日、診療時間及び予約診療が可能である旨
・ 休日又は夜間の診療若しくは往診の実施
・ 診療費用の支払い方法(クレジットカードの使用の可否等)
・ 入院施設の有無、病床数その他施設に関すること
・ 診療施設の人員配置
・ 駐車場の有無、駐車台数及び駐車料金
・ 動物医療保険取扱代理店又は動物医療保険取扱病院である旨
・ ペットホテルを付属していること、トリミングを行っていること、しつけ教室を開催していること等

5 最後に

以上のように、動物病院は一律にどのような広告もしてはいけないというわけではなく、法令に抵触しない範囲内で広告を利用することが可能です。とはいっても、獣医療法17条1項の規定に違反した場合は、第20条2号によって50万円以下の罰金に処せられる可能性があり経営上のリスクも存在しています。広告内容の適否について心配な動物病院様は、広告を掲示する前に、一度専門家か行政に相談されることをお勧めいたします。

執筆: 弁護士 松本達也