入社時の秘密保持契約の落とし穴!
1. 入社時の秘密保持契約書
皆様の会社では、従業員が入社する際に、会社の営業上の秘密を他に漏らしてはいけないという内容の秘密保持契約書などを作成されていますでしょうか?
私の経験上、一定の割合で、秘密保持契約書や誓約書が作成されています。
しかし、秘密保持の契約書や誓約書ですが、内容を検討して作成されていますでしょうか?ネットで見つけたものをそのまま使うというケースも多いのではないでしょうか?
内容を適切に検討せずに作成すると、「いざというときに役に立たない!」という可能性があります。今回は、契約書が機能しなかった実際の裁判例をご紹介するとともに、対策方法をお伝えします。
2. 秘密保持の「秘密」とは?
会社と従業員との間で交わされた秘密保持契約の内容が争いとなった、東京地方裁判所平成29年10月25日判決をご紹介します。
事案の概要
事案の概要は次のとおりです。
② Yは、新たに就職したA社にて、X社在籍時に「業務上知り得た事項」であるX社の商品の規格書、商品作成の工程表、商品の原価計算書に関するデータ、得意先、粗利管理表を、A社に漏えいさせた。
③ X社が元従業員Yに対し損害賠償請求をした。
そして、秘密保持契約は次のような内容でした。
① Xの経営上、営業上、技術上の一切の情報
② Xの顧客、取引先に関する情報の一切
③ Xが顧客、取引先と行う取引条件に関する情報の一切
④ その他、Xが機密事項として指定する情報の一切
裁判所の判断
裁判所は、秘密保持契約そのものは、従業員の退職後の行動を過度に誓約するものではない限り有効としました。
そのうえで、裁判所は次のとおり契約書の内容について判断しました。
そして、得意先・粗利管理表、規格書、工程表、原価計算書のいずれも会社において従業員が秘密と明確に認識しうる形で管理されていたということはできず、いずれも機密情報に当たらないとして、会社の請求を認めませんでした。
つまり、秘密保持契約書を作成したにもかかわらず、会社としては情報漏えいについての損害賠償請求はできませんでした。
3. 「秘密保持」の対策法
このように、契約書で抽象的にしか指定していない場合、あらゆる社内情報が当然に「機密情報」と認められるわけではない点に注意が必要です。
裁判で会社の権利を守るためには、社内での管理体制だけでなく、契約書の中で秘密の範囲をどれだけ具体的に特定できているかも重要になります。
具体的には、次のような対応を検討しましょう。
② 書類には社外秘などと記載し、従業員が秘密と明確に認識できる形で文書を管理する。
③ 秘密保持契約を締結する際は、どの文書が機密情報に当たるのか具体的に記載する。
執筆: 弁護士 前原彩