山之内幸夫元弁護士の指摘で共感・納得できる部分

最終更新日: 2016年10月27日

カテゴリ:

執筆: 弁護士 大澤一郎

「山口組顧問弁護士」山之内幸夫著(角川新書)を読み,興味深かった箇所をまとめつつ,2016年時点の私(普通の弁護士)の感覚で異論・反論をまとめてみました。(その3)

「山口組顧問弁護士」山之内幸夫著(角川新書)はとても売れ行きがよいそうです。実際,読み始めると,最後まであっという間に読んでいけます。とても面白い本でお勧めです。その中で,著者の指摘で共感できる部分をまとめました。

◆『今のコンプライアンスを真に受けていたらヤクザの家庭は社会生活ができない。それが嫌なら「暴力団をやめればよい」となるのだが,やめられる位なら最初から入っていない。実のところヤクザをやめたら,シャブの売人で日銭を稼ぐか,盗っ人専門で食っていく位しか仕事がない。それほど底辺の人間だからヤクザをやっているのである。』
*ちなみに,自動車保険には暴力団も入れます。暴力団が加害者の事件で保険未加入の場合,加害者の暴力団対被害者という交渉になってしまい保険が使えないというのでは被害者救済の観点から望ましくないからです。


◆『人がヤクザになる背景には差別や貧困,親の愛情の欠落等本人の責に帰しえない事情がうかがわれ,幼少年期に形成された劣等感は克服が極めて難しい。』
*暴力団に限らず刑事事件の犯罪者にはこのような人が多いと経験上私も思います。そのような人たちが幸せに暮らせる社会作りが大事です。


◆『私の心からの願いとして取り返しのつかないことだけは絶対にしないで欲しいと思う』
*今後,山口組と神戸山口組がより激しい抗争にならないようにという気持ちからの部分です。暴力団の抗争事件は避けて欲しいですし,ましてや一般市民が犠牲になるような事件は絶対に避けて欲しいと思います。


◆『ヤクザの収入減で一番大きい仕事が覚せい剤だ。(中略)山口組が覚せい剤を禁止しているのは覚せい剤の弊害を身を以て知っているからだ。「シャブは絶対にいかん」と本気で思っている。ただ現実には理想通りにもいかないが。それなら「何がいいのでしょうか」と,もし問われたら多分「勉強して,頭を使って民事介入暴力でスマートにしのぎなさい」という答えが返ってくるだろう。』
*社会は様々な矛盾に満ち溢れていることを感じさせる指摘で考えさせられる部分があります。

本記事へのよくある質問と回答

Q山之内幸夫さんはどのような方ですか?
A弁護士業界では非常に有名な方です。wikipediaの情報もご参照下さい。2022年よりYOUTUBEもされているようです。詳細は元山口組顧問弁護士山之内幸夫チャンネルをご覧ください。
Q刑事裁判で有罪になると弁護士資格がなくなりますか?
A刑事裁判で執行猶予付有罪判決以上を受けると弁護士としての仕事ができなくなります。なお、刑事裁判で罰金の場合には通常は弁護士としての仕事を続けられることが多いです。

関連リンク

執筆: 弁護士 大澤一郎