書かせときゃいいんでしょ?は大間違い!!秘密保持契約の落とし穴!
私の経験上では、意外と結構な割合で、会社従業員間においてこういう契約書や誓約書が作成されています。
しかし社長!その契約書や誓約書、内容まできちんと検討して作成していますか。ネットでダウンロードしたものをそのまま使っているというケースも多いのではないでしょうか。内容をきちんと検討せずに作成していると、いざというときに役に立たない!という可能性があります。今回はそんな結末になった実際の事例をご紹介するとともに、対策方法を伝授したいと思います。
また、今まで作ったことなかった!という社長さんには、このブログで紹介する対策法を踏まえつつ、新たに従業員との間で秘密保持契約を結ぶことをおすすめします。
このブログの目次
秘密保持契約キホンのキ
会社・従業員間の秘密保持契約の内容は、その会社の規模や職種、従業員の担当する業務内容によって様々です。
秘密保持の「秘密」とは?-東京地裁平成29年10月25日判決のご紹介-
X社Y間には、入社時に秘密保持契約が締結されており、契約の内容は以下のとおりでした。
ア Yは、原告在籍中はもとより退職(退任)後においても、業務上知り得た次に掲げる機密事項を会社外の第三者に対して漏えいせず、業務上の必要があるX従業員以外の者に開示せず、業務外の目的による使用行為…をせず、また、当該機密事項を用いての営業、販売行為は行わない。
- (ア)Xの経営上、営業所、技術上の一切の情報
- (イ)Xの顧客、取引先に関する情報の一切
- (ウ)Xが顧客、取引先と行う取引条件に関する情報の一切
- (エ)その他、原告が機密事項として指定する情報の一切
イ Yが本件各同意書で定める事項に違反し、それによってXが損害を被った場合には、Yは、Xに対しその損害を賠償する。
これに対し裁判所は、秘密保持契約そのものは、被用者の退職後の行動を過度に誓約するものではない限り有効とした上で、
と判断しました。
そして本件においては、得意先・粗利管理表、規格書、工程表、原価計算書のいずれもX社において従業員が秘密と明確に認識しうる形で管理されていたということはできず、いずれも機密情報に当たらないとして、Xの請求を認めませんでした。
「秘密保持」の対策法はこれだ!
具体的には、情報の重要度に応じてアクセス権限を設定する、書類には社外秘などと記載し、従業員が秘密と明確に認識できる形で文書を管理する、秘密保持契約を締結する際には、どの文書が機密情報に当たるのか具体的に記載するなどの対応が必要です。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。
執筆: 弁護士 前原彩