会社が注意すべき「副業」のキホン
しかし、副業には注意すべきポイントもたくさんあり、むやみやたらに解禁するのは禁物です。そこで、社員に副業を解禁するにあたっての注意点を詳しく見てみましょう。
副業とは?
法律上の副業の定義は今のところありません。
副業の現状‐厚労省は解禁を推進‐
しかし上に示すとおり、政府の推進する働き方改革の一環として副業・兼業が推進されるようになったことの影響か、近時では企業の副業解禁について徐々に報道されるようになってきました。
また、ネットで「副業」と検索すると、サラリーマンにおすすめの副業○選のようなページがたくさんヒットし、副業に関する関心が高まっていることを窺わせます。
会社が、社員の副業をOKする場合の注意点
(1)労働時間が通算されること
昭和23年の通達であり今の時代に即していない気がするのですが、この通達が活きている限り、現状はこのルールに従わざるを得ません。つまり、会社側が社員の副業の労働時間の把握を怠ると、知らずして割増賃金の支払い等の責任を負いかねないのです。
これを避けるためにも、社員が副業する場合には、副業の労働時間を把握しておくことが重要です。
(2)従業員の競業避止義務違反、守秘義務違反
会社が副業を解禁する場合には、会社に損害を及ぼさないためにも従業員がこの競業避止義務を遵守しているかきちんとチェックする必要があります。また、逆に、従業員が副業先で知り得た情報を自社にて漏えいしていないかもチェックしておかないと副業先との自社との間でのトラブルになりかねません。
そのため、副業を解禁するとしても、会社は従業員の副業先や業務内容の把握に努めなければなりません。
(3)会社の安全配慮義務違反
従業員の健康等に何らかの障害が発生した場合、従業員が副業をしていると、本業・副業どちらがその障害発生の原因になっているのか明確にならない場合も多いと予想されます。
そのため、副業先の環境が劣悪等の事情があっても、自社に責任追及されることも可能性としてはあり得るのです。
従業員が副業をしている場合の安全配慮義務違反について裁判所で明確に判断された事例はありませんが(厚労省「副業・兼業の推進に関するガイドライン」参照)、自社に責任追及が及ばないよう、副業の状況をきちんと聴取するとともに、自社における安全配慮を徹底する必要があります。
まとめ
そのため、会社が副業を解禁する際には、これらのリスクを踏まえ慎重に検討する必要があります。また、副業の解禁にあっては、法律上のルールの確認や就業規則の改正等も行う必要があるため、専門家に相談することをおすすめします。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。
執筆: 弁護士 前原彩