自己破産、自動車の引き揚げ要請に応じるべきか①
はじめに
自動車を分割払いで購入する場合、所有者名義人を販売会社、購入者を使用者にする形で、販売会社に自動車の所有権が留保されるケースが多いです。そして、購入者が完済した時点で、所有名義人が販売会社から購入者に移されます。
これは、支払いを担保するために行われるのですが、自己破産などで支払い不能に陥った場合、販売会社に対して代位弁済をしている信販会社が自動車の引き揚げを行おうとします。しかし、名義上は、販売会社が所有者であることから、信販会社の引き揚げ要請に応じてよいのかという問題が出てきます。
まず、この問題を考える以前に、所有権留保とは何か、また、破産の手続や効果について簡単に説明したいと思います。
これは、支払いを担保するために行われるのですが、自己破産などで支払い不能に陥った場合、販売会社に対して代位弁済をしている信販会社が自動車の引き揚げを行おうとします。しかし、名義上は、販売会社が所有者であることから、信販会社の引き揚げ要請に応じてよいのかという問題が出てきます。
まず、この問題を考える以前に、所有権留保とは何か、また、破産の手続や効果について簡単に説明したいと思います。
前提知識について
1、所有権留保とは
買主の支払いが完了するまで、物の所有権を売主のもとに残しておき、支払いが完了した時点で買主に所有権を移すといった、支払いの担保のために設定されるものです。所有権留保の法的性質などについては争いがありますが、購入代金支払いのための担保の一手段であると考えておけば、とりあえずは問題ないです。
2、破産手続が開始された場合の効果(47、78条)
破産手続は、債務者が支払い不能にあるとき、申立により、裁判所の決定で手続が開始します(破産法15条1項)。
破産の手続が開始されると、破産者の財産は破産財団となり(34条1項)、破産財団の管理処分権は破産者から破産管財人に移転することになります(78条1項)。よって、破産者は、破産手続開始後、自由に財産を管理・処分することはできなくなります。
また、債権者も原則として、破産手続によらなければ債権の行使ができなくなります(100条1項)。これは、債権者の平等を図るためです。よって、原則的に、債権者は破産手続に従って配当を受けることになります。
他方、このような手続とは別に債権者が債権の回収を図れる場合があります。具体的には、債権者に取戻権があるとき(62条)、別除権があるとき(65条)、相殺権があるとき(67条)です。
具体的には、
取戻権とは、目的物が破産財団に属していないことを主張する権利です(たとえば、第三者の所有権に基づく返還請求)。
別除権とは、破産財団に属する財産について破産手続きによらないで優先的に満足を受ける権利です(たとえば抵当権の実行)。
これらの制度の解説は、今回のテーマとの関係では話がずれるので、簡単な説明にとどめます。
所有権留保に関しては、取戻権なのか、別除権なのかが問題となりますが、実務では別除権の一つだと考えられています。
破産の手続が開始されると、破産者の財産は破産財団となり(34条1項)、破産財団の管理処分権は破産者から破産管財人に移転することになります(78条1項)。よって、破産者は、破産手続開始後、自由に財産を管理・処分することはできなくなります。
また、債権者も原則として、破産手続によらなければ債権の行使ができなくなります(100条1項)。これは、債権者の平等を図るためです。よって、原則的に、債権者は破産手続に従って配当を受けることになります。
他方、このような手続とは別に債権者が債権の回収を図れる場合があります。具体的には、債権者に取戻権があるとき(62条)、別除権があるとき(65条)、相殺権があるとき(67条)です。
具体的には、
取戻権とは、目的物が破産財団に属していないことを主張する権利です(たとえば、第三者の所有権に基づく返還請求)。
別除権とは、破産財団に属する財産について破産手続きによらないで優先的に満足を受ける権利です(たとえば抵当権の実行)。
これらの制度の解説は、今回のテーマとの関係では話がずれるので、簡単な説明にとどめます。
所有権留保に関しては、取戻権なのか、別除権なのかが問題となりますが、実務では別除権の一つだと考えられています。
次回について
次回は、自動車の引き揚げについて、最高裁平成22年6月4日判決の説明をしたいと思います。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。
執筆: 弁護士 辻悠祐