相続関係の民法改正案に注目です

最終更新日: 2018年03月15日

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執筆: 弁護士 今村公治

民法改正案を閣議決定

平成30年3月13日、相続に関する民法改正案などの閣議決定がなされました。今後成立すれば、民法で規定されている相続のルールが一部変更されることになります。

私のプチ自慢の一つですが、大学時代から現在まで体重がほとんど変わっておりません。(食事や運動による健康維持も仕事の一つですね!)

私の体重よりもずっと変化しなかったのが「民法」です。
昨年、民法制定から約120年ぶりに、民法の債権関係の規定を改正する法律が成立しました(平成29年6月2日公布)。そして今度は、民法の相続関係の規定が約40年ぶりに大きく改正されようとしています。 
そこで今回は、まだ要綱案の段階ではありますが、民法(相続関係)等の改正に関する要綱案のポイントを一部ご紹介いたします。

相続で配偶者を優遇する制度

簡単にいうと、夫婦の一方がお亡くなりになられた場合に、故人の配偶者(夫または妻)を保護する制度が設けられました。
要綱案ではたとえば次のような制度が挙げられています。

  1. 故人の配偶者が遺産である自宅に住んでいる場合(たとえば、夫名義の建物に夫婦で居住していたところ夫が亡くなった場合)に、相続開始後も一定期間、配偶者が居住建物について無償で使用できる、配偶者短期居住権に関する制度
  2. 要件を満たした場合に、他の相続人が所有者となっても、配偶者が居住建物について無償で使用収益することができる、長期的な配偶者居住権に関する制度
  3. 要件を満たした場合に、配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた居住不動産を遺産分割の対象から除外する制度

    居住権は所有権よりも評価額が低くなることが予想されるので、現在よりも柔軟な遺産分割ができる可能性があります。

自筆証書遺言をより利用しやすく

弁護士として遺言作成のご依頼を頂くことがありますが、弁護士が遺言作成をする場合には、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言をすすめることが多いです。自筆証書遺言ですと後で争いになるリスクがあるためです。
たとえば、自筆証書遺言の場合には、遺言の有効性を争われたり、遺言書の紛失、偽造のおそれがあります。また、そもそも遺言書が発見されないという危険もあります。そこで、今回の要綱案では、自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度を設けました。法務局に預けていた自筆証書遺言については、検認の手続をとらなくてもよいとされています。(検認とは家庭裁判所で行う手続で、遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防止するための手続です。)
また、要綱案には、自筆証書遺言の方式緩和に関する記載もあります。現在の民法では、自筆証書遺言は全文を自書する必要があるところ、要綱案では、遺言書のうち財産目録については要件を満たせば自書しなくてもよい(パソコン等での作成が可能)とされています。

この自筆証書遺言に関する要綱案は、遺言者の実情にあった改正内容となっています。成立すれば、自筆証書遺言を“終活”の手段として利用しやすくなりそうです。

備えあれば憂いなし

以上、いま話題の改正相続法の要綱案ポイント解説でした。

今回ご紹介したのは、要綱案の一部です。他にも、預貯金の払戻し制度や、遺留分制度、相続不動産の登記制度、特別寄与料という新制度などに関して、重要な改正がなされる可能性があります。

民法(相続関係)等の改正について、法律が成立すればニュースで多く取り上げられると思いますので、今後注目してみてください。

相続問題はだれもが直面し得る問題です。
正しい知識を身につけて、円満相続にしましょう。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 今村公治

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