ペットの診療報酬請求権の時効は何年?

最終更新日: 2020年04月01日

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執筆: 弁護士 松本達也

1 はじめに

動物病院の手術費等は飼い主側がペット保険未加入で高額になることが多く、結果的に未払いとなってしまうケースも多いです。そこで、今日は、動物病院での診療報酬請求権の法律上の性質と改正民法の影響がどうなるのかをご紹介します。

2 診療報酬の消滅時効について

民法170条1号は、債権の消滅時効について下記のように定めています。

(三年の短期消滅時効)
第170条
 次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。
一  医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
二  工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権

民法には、動物病院の診療報酬債権の消滅時効について明文上の規定はありませんが、動物病院の診療報酬債権についても、医師等の診療報酬債権と同様に3年間権利を行使しないときには消滅時効が完成すると考えられています。そのため、動物病院側は、基本的に3年以内に診療報酬債権の回収を行わなければならないこととなります。

3 民法改正との関係について

2020年4月1日より、改正民法が施行されます。その目玉の一つとして消滅時効に関する改正があり、170条の短期消滅時効は撤廃され、「権利を行使することができる時から10年」という従来の時効期間に加えて、「権利を行使できると知った時から5年」という主観性を含んだ規定が設けられ、いずれか早い方の経過によって時効が完成することとなります。

動物病院の診療報酬債権の消滅時効についても、民法改正によって、短期消滅時効の適用はなくなり、10年もしくは5年の時効期間が適用されると考えられます。

4 いつからの契約に適用?

この時効に関するルールは、「施行日前に債権が生じた場合」又は「施行日前に債権発生の原因である法律行為がされた場合」には、その債権の消滅時効については、原則として債権発生前の民法が適用され、このいずれにも当たらない場合には、改正後の民法が適用されます。

そのため、動物病院の診療報酬請求権については、施行日である2020年4月1日の前後で適用される民法のルールが変わることとなりますので、皆様十分ご注意ください。動物病院の診療報酬についてお悩みの方は、お気軽に弁護士までご相談頂ければと思います。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 松本達也