動物の売買と民法改正

最終更新日: 2020年04月03日

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執筆: 弁護士 松本達也

はじめに

令和2年4月1日から施行された改正民法では、瑕疵担保責任のルールが変わります。今日は、改正民法が動物の売買契約に与える影響について記載したいと思います。

改正前民法

販売した動物が先天性の病気に罹患したり、障害を有していたとしてトラブルになるケースは少なくありません。

従前の民法では、売買契約の対象となったペットが特定物であるか、もしくは不特定物であるかによって、販売した動物に関するトラブルについて法的請求を行う根拠や請求権の内容が異なっていました。

例えば、特定物売買といえるためには、買主が、「このマンチカン(猫)がほしい」というように、特定の個体を購入することを希望していることが必要でした。他方で、不特定物売買と判断されるのは、買主が、「マンチカンの雌がほしい」というように、特定の個体ではなく、ある種類のペットを購入することを希望していた場合でした。

従前の民法では、前者の特定物売買の場合には、買主は、瑕疵担保責任に基づいて、売買契約の解除又は信頼利益(その契約が有効であると信じたために発生した損害:ペットローンで猫を購入した時の借入利息等)の損害賠償を求めることができるにとどまりました。一方で後者の不特定物売買の場合には、買主は、債務の不履行を根拠として契約の解除又は履行利益(その契約が履行されていれば、その利用や転売などにより発生したであろう利益)の損害賠償を求めることができると考えられていました。

改正後民法

令和2年4月4日から施行される改正民法によって上記の瑕疵担保責任が契約不適合責任という整理に代わりました。すなわち、売主が契約の目的に適合しないものを引き渡したときは、買主は、契約不適合責任として、目的物の修補(瑕疵を修理して補うこと)や代替物の引き渡しなどの履行の追完の請求、損害賠償請求、契約解除、代金減額請求ができ、かかる請求は売買契約の目的物が特定物か不特定物かにかかわらず、履行の追完の請求等ができることとなりました。
また、債務不履行責任についても、売買契約の目的物が特定物か不特定物かにかかわらず、販売業者が債務の本旨に従った履行をしないときには、それによって生じた損害の賠償を請求することができることとされました。
このように改正民法の下では、購入した動物が特定物か不特定物かという区別にかかわらず、購入者がより保護されることとなりました。もちろん改正は動物の売買に限られるものではありませんので、売買に携わる皆様は十分注意する必要がございます。お困りの際には弁護士まで是非ともご相談ください。

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 松本達也