東京ミネルヴァ法律事務所の破産手続開始決定~法律事務所が負債を負う原因

最終更新日: 2020年06月25日

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執筆: 弁護士 大澤一郎

1 はじめに

弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所が、2020年6月24日に破産手続開始決定を受けたというニュースがありました。私も弁護士15人の法律事務所の所長ですが、私の経験から、今回の破産手続開始決定について思うところをまとめました。(なお、本ブログ記事は6月24日時点の情報を元にしています。)

2 法律事務所が多額の負債を負う原因

私の感覚では、法律事務所が多額の負債を負う原因は、預り金の未返金です。法律事務所は、個別の事案の預り金として、弁護士1名の事務所であったとしても数億円単位を預かることもあります。

過払い金返還請求をしている場合には、過払い金の返金を法律事務所の預り口に指定することは多く運用されていますので、本来であればお客様に返金すべき預り金の未返金で負債がたまるということは大いにありえることです。また、交通事故で高額の賠償金が入金されるような場合も同様です。
  (なお、通常、法律事務所は預り金と売上を別口座で管理しています。日本弁護士連合会の規定にも預り金と売上は別口座で管理するよう規定されています。)
  
第一東京弁護士会の会長談話にも「当会による調査の結果、回収した過払金等の保管状況に不明な点があり、依頼者に返還することが困難な状況に陥っている疑いがある」とされています。

3 本当に怖い非弁提携

あくまで一般論であり、今回の破産手続開始決定がどのような経緯かは私にはわかりません。ただし、過去の預り金の未返金の事案を見ると、非弁提携(弁護士ではない人が法律事務所を実質的に運営している)の事案が多い印象を受けます。

今後、事案の概要が明らかになっていくかと思いますが、仮に、残念なことに預り金の未返金という事態が発生してしまった場合、非弁提携の問題も出てくる可能性があります。

4 弁護士の預り金に対する不信感の増長

どの業界にも社会の常識とは異なる慣行はあると思います。
弁護士業界では当然の慣行ですが、社会の目から見ると不思議に見えることの1つがこの「預り金」です。今後、預り金の原則禁止、預り金をする場合の弁護士会の規制の大幅な強化などが予想されます。(預り金の規制は強化した方がよいと私は思います)

5 預り金以外が原因の可能性も否定できない

もちろん、預り金以外が今回の破産手続開始決定の原因である可能性もあります。ただ、いずれにしても弁護士数や規模からして、51億円という負債はあまりに多いです。今後の破産手続、弁護士会の調査、場合によっては刑事手続などの中で詳細が明らかになることを期待します。

6 お客様が取るべき行動

お客様が取るべき行動(特に緊急にとるべき行動)は別記事弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所の破産手続開始決定とお客様がすべき行動にまとめました。

(文責 弁護士 大澤一郎

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

執筆: 弁護士 大澤一郎