民事介入暴力対策全国拡大協議会に参加しました
1. 函館での開催
北海道の函館市で開催された、民事介入暴力対策全国拡大協議会に参加しました。
今回の開催地である北海道函館市は、美味しい食べ物が豊富で、異国情緒溢れる街並みに多くの観光スポットがあるなど、旅行先として非常におすすめの場所です。
中学校時代の修学旅行先が函館であったこともあって、個人的に思い入れが深い土地でもあります。
2. 民事介入暴力対策全国拡大協議会とは
民事介入暴力対策全国拡大協議会(通称「民暴大会」)とは、日本全国の弁護士などが一堂に会し、民事介入暴力のうち特定のテーマについて、検討や協議を行う場です。
今回は12回目の開催であり、テーマは「行政に対するカスタマーハラスメントとその対策」でした。
3. カスタマーハラスメントとは?
令和4年2月に厚生労働省が公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」といいます)とは「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。
要するに、正当性のない悪質なクレームや要求のことです。
実際の場面では、本当に正当性がないのかなど、カスハラ該当性の判断が難しいことも多いです。近年ではカスハラが社会的問題になってきていることもあり、従業員を守るため、カスハラへの対応指針を公表する企業等が増えています。
4. 行政に対するカスタマーハラスメント固有の問題
行政では企業とは異なる対応が必要
企業に対するものと異なり、行政に対するカスタマーハラスメントには固有の問題がいくつか存在します。そのひとつに「カスハラの主体が、カスハラの対象である自治体に居住している」という点があります。
具体的な場面としては、市役所の職員に不当な要求を行う方がいたとしても、その方が住民である以上、市役所を出入り禁止にすることは住民の権利を大きく損なうため、非常にハードルが高いです。
企業であれば毅然とした対応が可能なこともありますが、自治体などの行政では同様の対応が難しいのが現状です。
濫用的情報公開請求の問題
行政に対するカスハラの態様として「濫用的情報公開請求」というものがあります。
そもそも情報公開請求とは、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)に定められている、住民が自身の権利を実現するために行政機関が保有している資料などの開示を求めることができる制度です。この制度を悪用して、自治体の職員に過度な負担を強いることなどを目的とする情報公開請求が、濫用的情報公開請求です。
過去には、濫用的情報公開請求によって、数万枚の資料を個人情報の保護のためにマスキングするという作業が発生した例もあったとのことです。このような事態が横行すれば、自治体職員が離職するなど、住民が十分な行政サービスが受けられなくなるおそれがあるため、他人事と思わずに真剣に向き合っていかなければなりません。
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5. まとめ:行政へのカスハラ対策の難しさと重要性
行政に対するカスハラは、その自治体と住民に大きな悪影響を及ぼしかねない、深刻な問題です。
行政という組織の性質上、簡単に解決できるものではないですが、私も弁護士としてどうすれば改善していけるかを今後も考え続け、力になりたいと思います。
執筆: 弁護士 大竹裕也