死亡した人が生命保険をかけていたのかどうか知る方法はありますか?その2「生命保険契約照会制度の創設」

最終更新日: 2021年06月18日

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執筆: 弁護士 佐藤寿康

1 保険契約があったはずだが、というときの調査方法

詳細は上記の記事にお書きしましたが、以下、ご自身ではどうしても分からなかったときの方法に限ってお書きしていきます。

⑴ 平成29年5月までは「一括照会」をすることができた。
弁護士が弁護士法23条の2に基づいて生命保険協会に対して生命保険契約の有無を照会することにより、生命保険協会が生命保険会社各社に照会をして回答を受けることができました。
漏れが生じることがない、とても便利な方法でした。
⑵ 平成29年5月からは「一括照会」ができなくなった。
上記URLの記事の最下部に追記しましたとおり、一社一社個別の保険会社に対して保険契約の有無を照会する方法しか採れなくなりました。不確実でかつ非効率的な方法です。
実際には被相続人が加入していた生命保険があっても、みつからないままになる可能性が残ります。
⑶ 「生命保険契約照会制度」の創設
生命保険協会において「生命保険契約照会制度」が創設され、令和3年7月1日から運用されることとなりました(生命保険協会2021年6月11日ニュースリリース)。
これは、契約者や被保険者が亡くなられたときのほか、認知判断能力が低下しているときに、法定相続人や一定の親族が生命保険協会へ照会を行うことができ、この照会を受けた生命保険協会は、一括して生命保険会社各社に対して照会してその回答結果を取りまとめて照会者に回答するというものです。詳しくは次のURLをご覧ください。
https://www.seiho.or.jp/info/news/2021/20210611_1.html
なお、掲載日時点の報道によると、インターネットまたは郵送で申し込むことができ、利用料は1回3000円となっています。

2 生命保険契約照会制度への期待と課題

⑴ 死亡時
「あなたは生命保険に加入していたの?」「たしか加入していたと思うんだけど、どこの保険会社だったっけ。」と尋ねられればよいのですが、尋ねても答えてくれる人は残念ながらいません。かつての一括照会はこの問題を一挙に解決する方法でした。しかし、平成29年5月以降、この問題を確実に解消できる手段が存在しませんでした。
このたび、かつての一括照会と同様に簡易に確実にこの問題を解消できる手段が創設されることは非常に良いことだと考えます。
⑵ 存命時
一方、この度創設された生命保険契約照会制度においては、ご本人が存命のときでも、法定相続人や一定の親族が照会できることになっています。その際、ご本人の認知判断能力が低下していることが要件ということになっていますが、
① どの程度低下していることが要件とされるのか
② 照会の際にどのような書類が要求されるのか
が問題になります。ご存命のご本人にとっては「自分の生命保険の情報をあの人に知られたくない。」とお考えになることもあるはずです。
・法定相続人や一定の親族の知りたいという要望
・ご本人の知られたくないという要望
の調整が課題になるように思います。

執筆: 弁護士 佐藤寿康