ドタキャンの法的責任とは?民事責任編

最終更新日: 2021年09月16日

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執筆: 弁護士 松本達也

1 はじめに

無断キャンセルはNO

飲食業界には、予約を入れたにも関わらず、当日の来店はおろかキャンセルの連絡すらしないという「無断キャンセル」問題があります。今回のブログでは、前回の刑事責任編に続いて、無断キャンセル問題と民事責任との関係を取り上げたいと思います。

2 無断キャンセルの民事責任とは?

お客さんから「特定の日付にお店を利用したい」と申し出があり、お店側が「それでは当日ご来店をお待ちしています」と電話もしくはメールなどでやり取りがあった場合、民法上は、お客さんとお店との間に契約が成立します。

そのような契約があるにもかかわらず、無断キャンセルし、お店を利用しないことは、お客さん側が、契約に基づく義務を果たさないとして民法415条の債務不履行に該当する可能性があります。

債務不履行に該当する場合は、材料代や人件費などの損害をお店側がお客さんに請求できることとなります。

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。一債務の履行が不能であるとき。二債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。三債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

3 キャンセルポリシーがある場合はどうなる?

最近は、飲食店の予約の際に予約キャンセルについての注意事項であるキャンセルポリシーが規定されていることが多いです。もっとも、キャンセルポリシーの内容については、消費者契約法で無効にならない条項を作成しておく必要がありますので、お店側もその点には注意が必要です。

キャンセルポリシーを設定し、内容をお客さんに伝えることは、お客さんの無断キャンセルを減らすことにも繋がります。そのため、理想的には電話予約の場合であっても、必要最低限のキャンセルポリシーの説明は行うべきであると思います。

4 最後に

無断キャンセルは、キャンセルを行う側に損害賠償責任が発生し得ることをお伝えしてきましたが、お店側としては、仮に損害賠償の請求が法律上出来得るとしても、費用対効果の関係で泣き寝入りしてしまうことも多いのが現状です。

一番重要なのは、やはりキャンセルをさせない、もしくは出来るだけさせないための仕組みづくりです。最近は、予約の再確認の徹底(予約日の前日の確認)や、キャンセルポリシーの設定などを工夫している飲食店も増えています。設定しているキャンセルポリシーのチェックなどについても当事務所は対応可能ですので、ご不安な飲食店様は一度当事務所までご相談ください。

執筆: 弁護士 松本達也