マンション滞納管理費①~相手が所在不明の場合はどうすれば良いの?
1 はじめに
最近、マンションの管理費滞納の件で相談を受ける機会が増えております。そこで今回のブログでは、マンションの管理費等滞納に関する問題についてお届けします。
2 マンションの管理費等のトラブルはどのくらい発生しているの?
国土交通省の公表している「平成30年度マンション総合調査結果について」によると、管理費・修繕積立金を3カ月以上滞納している住戸があるマンションは、全体の24.8%とされています。また、完成年次別では、築年数が古いマンションの方がマンション管理費等滞納の割合が高くなる傾向があるようです。
3 とある相談事例
ここからは、架空の相談事例に基づいて、マンション管理費滞納についてご説明させていただきます。
当マンションにはマンション管理費等の滞納のトラブルがあるのですが、その滞納者が所在不明になってしまっています。内容証明郵便を送付しましたが戻ってきてしまい、最早連絡を取ることもできない状態です。どうやらその住居に人が住んでいる気配はなさそうです。このような場合、管理組合としてはどのように対応すればよいのでしょうか。
⑴ 訴訟提起する方法があります!
滞納区分所有者を放置しておくと、管理費等の滞納額はどんどん増えていくこととなり、また消滅時効によって滞納額が消滅してしまう可能性もあります。
そのため、滞納している区分所有者に対しては、訴訟提起する以外に状況を打開する方法がなかなかないことも多いです。
⑵ まずは所在調査を行うこととなります!
訴訟は訴えを提起された被告に対して、反論の機会を保障する必要があります。この手続き保障のスタートは、原告側の主張が記載された訴状が被告に「送達」されることから始まります。
一般的に送達には、「特別送達」という、厳重な方式による郵便の上で被告本人が受領するという方法がとられることが多いです。しかし被告が行方不明の場合、このような手段をとることは極めて困難です。そこで、まずは被告の所在を調査することとなるのが一般的です。例えば相手が個人であれば、住民票や戸籍の附票を取得し、住民票上の住所を調査し、その上で、実際その住所に居住しているかを確認することとなります。
その結果、訴状等の受領を単に被告が拒否しているのであれば、「付郵便送達」の上申書を、被告の所在地が分からず所在不明の場合は、「公示送達」の上申書を裁判所に提出します。
⑶ 付郵便送達の場合の訴訟手続き
付郵便送達とは、裁判所が郵便を発送した時点で相手方に送達が完了したとみなすものです。この手続きが取られた場合、被告は裁判所には出廷しないことが多いです。被告が出廷しなかった場合は、民事訴訟法上、口頭弁論または弁論準備手続において、当事者が相手方主張の事実を明らかに争わないためにその事実を自白したとみなされる擬制自白(民訴法159条)が成立します。
⑷ 公示送達の場合の訴訟手続き
公示送達とは、当事者の住居所が不明な場合、または通常の送達方法によることができない場合などに、その書類を一定期間、裁判所の掲示場などに掲載して公示する方法を言います。公示送達の場合は、先ほどの擬制自白は成立しないため(民訴訟159条3項但し書き)、原告側は裁判の中で証拠による立証が必要となります。もっとも、被告側の反論はないことから、通常の訴訟に比べると立証の負担は軽減されています。
4 最後に
相手方が所在不明の場合には、以上のような問題点があります。同様の問題でお困りの方は、一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
執筆: 弁護士 松本達也