ドタキャンの法的責任とは?刑事責任編

最終更新日: 2021年09月09日

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執筆: 弁護士 松本達也

1 はじめに

飲食店の無断キャンセル問題

飲食業界には、予約を入れたにも関わらず、当日の来店はおろかキャンセルの連絡すらしないという「無断キャンセル」問題があります。飲食店の方であれば一度は無断キャンセルの被害を受けた経験があるのではないでしょうか。今回のブログでは、そんな無断キャンセル問題と刑事責任との関係を取り上げたいと思います。

2 無断キャンセルに刑事責任はあるのか?

刑事責任とは、法律を犯した者(犯罪者)に対し、国により懲罰などの罰が与えられる責任を言います。無断キャンセル行為によって、国から罰が与えられてしまうことがありますので、皆様無断キャンセルには気をつけましょう!!

(1)偽計業務妨害罪

まず、お店の営業を妨害する目的で無断キャンセルを行った場合は「偽計業務妨害罪」という犯罪にあたる可能性があり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

偽計業務妨害罪は、あまり聞きなれない犯罪だと思います。私も法律を勉強するまでは、全く聞いたこともない犯罪でした。最近では、いわゆるバイトテロ(従業員がバイト先の店内で悪ふざけをする様子を動画に撮り、それをSNSに公開したところ、拡散してしまうなど)の事案などで、当該行為がお店に対する偽計業務妨害罪(方法によっては威力業務妨害罪)にあたる可能性があると話題になっていました。

刑法上偽計業務妨害罪は、「虚偽の風説を流布」し、または「偽計を用い」て、人の「業務を妨害」することをいうと規定されています。「虚偽の風説を流布」?し、または「偽計を用い」?とはいったいどのような犯罪を言うのかということですが、簡単にいうと、事実と異なることを伝えたり、人をだましたりして業務を妨害することをいいます。

具体例としては、お店を困らせるためだけの目的で、居酒屋のコースを20人分予約し、実際にはお店に行かないようなまさに無断キャンセルなどの事案があります。

(2)軽犯罪法

他にも、他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害したとして、軽犯罪法1条31号に該当する可能性もあります。

軽犯罪法についてはあまりご存じがない方も多いと思いますので軽くご紹介します。

軽犯罪法は、軽微な秩序違反行為に対して拘留、科料の刑を定める日本の法律であり、具体的には下記のようなものが軽犯罪法に該当します。

①潜伏(第1号)②凶器携帯(第2号)③侵入具携帯(第3号)④浮浪(第4号)⑤粗野・乱暴(第5号)⑥消燈(第6号)⑦水路交通妨害(第7号)⑧変事非協力(第8号)⑨火気乱用(第9号)⑩爆発物使用等(第10号)⑪危険物投注等(第11号)⑫危険動物解放等(第12号)⑬行列割込み等(第13号)⑭静穏妨害(第13号)⑮称号詐称・標章等窃用(第15号)⑯虚構申告(第16号)⑰氏名等不実申告(第17号)⑱要扶助者・死体等不申告(第18号)⑲変死現場等変更(第19号)⑳身体露出(第20号)㉑こじき(第22号)㉒窃視・のぞき(第23号)㉓儀式妨害(第24号)㉔水路流通妨害(第25号)㉕排せつ等(第26号)㉖汚廃物放棄(第27号)㉗追随等(第28号)㉘暴行等共謀(第29号)㉙動物使そう・驚奔(第30号)㉚業務妨害(第31号)㉛立入禁止場所等侵入(第32号)㉜はり札・標示物除去等(第33号)㉝虚偽広告(第34号)

軽い気持ちのいたずらをであったとしても軽犯罪法に該当する可能性がありますので、当たり前ですが絶対にやめましょう。

3 最後に

今回は、無断キャンセルと刑事責任についてご紹介させていただきました。後編では、無断キャンセルと民事責任についてご紹介させていただきます。

執筆: 弁護士 松本達也