ドタキャンの法的責任とは?刑事責任編
1 はじめに
飲食業界には、予約を入れたにも関わらず、当日の来店はおろかキャンセルの連絡すらしないという「無断キャンセル」問題があります。飲食店の方であれば一度は無断キャンセルの被害を受けた経験があるのではないでしょうか。今回のブログでは、そんな無断キャンセル問題と刑事責任との関係を取り上げたいと思います。
2 無断キャンセルに刑事責任はあるのか?
刑事責任とは、法律を犯した者(犯罪者)に対し、国により懲罰などの罰が与えられる責任を言います。無断キャンセル行為によって、国から罰が与えられてしまうことがありますので、皆様無断キャンセルには気をつけましょう!!
(1)偽計業務妨害罪
まず、お店の営業を妨害する目的で無断キャンセルを行った場合は「偽計業務妨害罪」という犯罪にあたる可能性があり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
偽計業務妨害罪は、あまり聞きなれない犯罪だと思います。私も法律を勉強するまでは、全く聞いたこともない犯罪でした。最近では、いわゆるバイトテロ(従業員がバイト先の店内で悪ふざけをする様子を動画に撮り、それをSNSに公開したところ、拡散してしまうなど)の事案などで、当該行為がお店に対する偽計業務妨害罪(方法によっては威力業務妨害罪)にあたる可能性があると話題になっていました。
刑法上偽計業務妨害罪は、「虚偽の風説を流布」し、または「偽計を用い」て、人の「業務を妨害」することをいうと規定されています。「虚偽の風説を流布」?し、または「偽計を用い」?とはいったいどのような犯罪を言うのかということですが、簡単にいうと、事実と異なることを伝えたり、人をだましたりして業務を妨害することをいいます。
具体例としては、お店を困らせるためだけの目的で、居酒屋のコースを20人分予約し、実際にはお店に行かないようなまさに無断キャンセルなどの事案があります。
(2)軽犯罪法
他にも、他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害したとして、軽犯罪法1条31号に該当する可能性もあります。
軽犯罪法についてはあまりご存じがない方も多いと思いますので軽くご紹介します。
軽犯罪法は、軽微な秩序違反行為に対して拘留、科料の刑を定める日本の法律であり、具体的には下記のようなものが軽犯罪法に該当します。
軽い気持ちのいたずらをであったとしても軽犯罪法に該当する可能性がありますので、当たり前ですが絶対にやめましょう。
3 最後に
今回は、無断キャンセルと刑事責任についてご紹介させていただきました。後編では、無断キャンセルと民事責任についてご紹介させていただきます。
執筆: 弁護士 松本達也