弁護士、司法書士と行政書士の違いは?依頼する前に知っておくべきこと

最終更新日: 2026年06月05日

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執筆: 弁護士 米井舜一郎

相続、不動産取引、会社設立や許認可申請など、法律が関わる手続きでは、「弁護士・司法書士・行政書士の誰に頼めばよいのか」と迷う場面が少なくありません。

三者はいずれも国家資格ですが、業務範囲や代理権に違いがあります。

本記事では、弁護士の視点から、三士業の違いと、ご自身の事案に適した専門家を選ぶためのポイントを整理します。

1. 弁護士・司法書士・行政書士の基本的な違い

弁護士、司法書士、行政書士の違い三士業の最大の違いは、「扱える法律事務の範囲」と「代理権の有無」です。

弁護士とは(法律全般の専門家)

弁護士は、すべての裁判所で訴訟代理権をもち、民事・家事・刑事・行政のあらゆる事件に対応可能です。

訴額(裁判で請求する金額など)や裁判所に関わらず、依頼者の代理人として、相手方との交渉、書面作成、訴訟活動を一貫して担えるのは、弁護士のみです。

司法書士とは(登記の専門家)

司法書士は、不動産登記・商業登記の専門家です。裁判所・検察庁・法務局への提出書類の作成や、成年後見の申立てに関する業務も担います。

また、法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」は、訴額140万円以下の民事事件に限り、簡易裁判所での訴訟代理や裁判外の交渉を行うことができます。

行政書士とは(許認可の専門家)

行政書士は、行政書士法に基づき、官公署に提出する書類の作成と提出代理を中心業務とします。

建設業許可、飲食店営業許可、宅建業免許、入管手続、農地転用など、許認可申請のスペシャリストです。

行政書士は、契約書や遺産分割協議書などの作成を担うことができますが、すでに当事者間で争いがある(紛争性がある)事案には関与できません。あくまで「トラブルや争いがないこと」を前提とした書類作成の支援にとどまります。

士業を一覧で比較(業務範囲・代理権の早見表)

三士業の主な違いを表に整理すると、次のとおりです。

項目 弁護士 司法書士 行政書士
根拠法 弁護士法 司法書士法 行政書士法
訴訟代理権 あり 認定司法書士は簡裁・140万円以下のみ可 なし
登記申請 可※ 独占業務 不可
許認可申請 可※ 不可

※弁護士が、登記申請や許認可申請を行うことは可能です。しかし、いずれも専門的な知識が必要なため、弁護士が行うことは多くありません。

2. 業務範囲の違い

弁護士の業務範囲(法律事務全般・訴訟代理)

弁護士は、紛争性のある事件を含む法律事務全般を取り扱います。

民事・家事・刑事・行政の各訴訟代理、契約書の作成・チェック、示談交渉、内容証明郵便の発送、企業法務、債務整理、遺言・遺産分割、後見業務など、業務範囲は広範です。

相手方との交渉や訴訟が想定される事案は、原則として弁護士の業務範囲となります。

司法書士の業務範囲(不動産登記・商業登記・認定司法書士の簡裁代理)

最も中心的な業務は登記申請です。

所有権移転、抵当権の設定・抹消、会社設立や役員変更などの登記申請を代理します。

認定司法書士であれば、140万円以下の民事事件について簡易裁判所で訴訟代理・調停代理・裁判外の交渉も可能です。

140万円を超える事件では代理人にはなれず、書類作成による本人訴訟支援にとどまります。

行政書士の業務範囲(官公署提出書類の作成・許認可申請)

行政書士は、行政手続の書類作成・提出代理を専門とします。

建設業・宅建業・運送業などの許認可申請、入管手続、自動車関連手続のほか、契約書・遺産分割協議書などの作成も担います。

3. どの士業に依頼すべきかの具体例

相続・遺産分割の場合

相続人間に争いがなく、不動産の名義変更(相続登記)が中心であれば司法書士が適任です。

一方、遺産分割で意見が対立する場合や、遺留分・遺言の効力をめぐる紛争がある場合は、交渉や家庭裁判所での調停・審判の代理ができる弁護士に依頼します。

行政書士は、遺産分割協議書作成などの支援が中心となります。

不動産登記・商業登記の場合

売買・贈与・相続による所有権移転、抵当権の設定・抹消、会社設立・役員変更などの登記は司法書士の業務範囲です。

借金・債務整理の場合

個人再生・自己破産は地方裁判所での手続きとなるため、代理人として申立てができるのは弁護士のみです。司法書士は申立書類の作成によるサポートに限られます。

任意整理についても、債権者1社あたりの債務額が140万円を超える場合は弁護士でなければ代理できませんが、140万円以下であれば認定司法書士でも対応可能です。

離婚・交通事故・労働問題などの紛争案件の場合

交通事故の損害賠償請求、未払残業代請求など、相手方との交渉や訴訟が想定される事案は、弁護士の業務範囲です。

訴額が140万円以下であれば、認定司法書士でも対応可能ですが、実際に扱う件数はそれほど多くありません。

たとえば交通事故では、保険会社の提示額が裁判基準より低いケースが多く、弁護士が代理人として交渉することで賠償額が大きく変わることもあります。

離婚でも、慰謝料・財産分与・養育費・親権など論点が多く、弁護士による専門的な代理活動が必要な場合が多いです。

飲食店営業許可・建設業許可など許認可申請の場合

飲食店営業許可、建設業許可、宅建業免許、運送業許可、在留資格申請など、行政官庁への申請が中心となる案件は行政書士が最適です。

当該分野の実績がある事務所を選ぶことで、許可取得までのスピードと確実性が高まります。

4. 依頼する前に知っておきたい確認ポイント

自分のケースが業務範囲内かを確認する

士業ごとに業務範囲は法律で明確に定められています。

「交渉してほしい」「裁判で代理してほしい」といった要望が、その士業の範囲内かを最初に確認することが大切です。

専門分野・実績を確認する

同じ士業でも、得意分野は事務所により大きく異なります。

たとえば弁護士でも、企業法務中心の事務所、相続中心の事務所、交通事故中心の事務所などがあります。Webサイトの取扱分野や解決事例を確認し、初回相談で説明のわかりやすさや相性も判断材料に加えるとよいでしょう。

費用を事前に確認する

費用体系は士業・事務所により異なります。

弁護士は着手金・報酬金方式やタイムチャージ方式、顧問契約による定額方式などがあります。

司法書士・行政書士は手続きごとの基本報酬をベースに、案件の難易度や財産の額に応じて加算される仕組みが一般的です。

依頼前に見積書・委任契約書で、対応範囲・費用総額・追加費用の条件・実費の扱いを明確にしておくことが、後日のトラブル防止につながります。

5. よくあるご質問(FAQ)

「認定司法書士」とは?

法務大臣の認定を受けた司法書士のことで、簡易裁判所における訴額140万円以下の民事事件について、訴訟代理・和解・調停・裁判外の交渉を行う権限を有します。

140万円を超える事件や地方裁判所以上の事件では、認定司法書士であっても代理権はありません。

1つの案件で複数の士業に依頼することはある?

あります。たとえば相続の案件では、紛争解決を弁護士が担当し、その後の登記申請を司法書士に依頼するといった分担をすることがあります。

複雑な事案では、まず弁護士に相談し、必要に応じて他士業を紹介してもらうのも一つの方法です。

6. まとめ:事案に応じて適切な専門家の選択を

弁護士・司法書士・行政書士は、いずれも法律にかかわる国家資格ですが、業務範囲と代理権の範囲が異なります。

紛争性のある事件は弁護士、登記は司法書士、許認可は行政書士、というように区別するのが一般的です。

相続のように複数の士業の関与が必要な案件もあり、ケースに応じた場合分けと連携が、円滑な解決につながります。

執筆: 弁護士 米井舜一郎