契約書にサインする前に確認すべき10のチェックポイント
1. 思わぬトラブルに巻き込まれないために
「契約書にサインをお願いします」と言われて、サインをした経験、一度はあるかと思います。
しかし、契約書に一度サインをしてしまうと、それは「そこに書かれている内容をすべて理解し、同意した」という証拠になってしまいます。
後になって「よく読んでいなかった」「そんなつもりではなかった」という言い訳は通用しないのが現実です。
そこで本記事では、思わぬ法的トラブルに巻き込まれて後悔しないために、契約書にサインする前に必ず自分で確認すべき10のチェックポイントを弁護士が分かりやすく解説します。
「すぐに自分で確認できる基本項目」から「専門家である弁護士への相談を検討すべき重要項目」までご紹介しますので、手元にある契約書をチェックしながらご覧ください 。
2. 原本が人数分作成され、各当事者が保管することになっていること
まずは、契約書の中身を見なくてもチェックできるポイントからご説明いたします。
契約書の原本は人数分作成されていますでしょうか。1通しかなく、しかも保管するのは相手方のみであるとすれば、極めて危険です。
まずは、相手方によって、契約書の内容が改ざん・変造されてしまうおそれがあります。そして、1通しかない契約書がなくなってしまった場合、契約の成立や内容を証明する証拠がなくなってしまいます。
さらに、相手が契約内容に従った対応をしないためトラブルになった場合には、訴訟などの法的手段をもって解決をする必要があります。しかし、自分が契約書の原本を持っていないということになると、契約をしていること自体を立証することが難しくなる場合があり、訴訟において不利になってしまいます。
以上のようなリスクを防止するために、原本が複数あり、各自が保管することになっているかチェックしましょう。契約書の末尾には「上記契約の成立を証するため、本契約書を2通作成し、各自署名押印の上、各1通を保有する。」といった文言の記載があることが多いです。
3. 自分の権利義務、相手の権利義務が記載されていること
契約をするということは、「あなたは、わたしに〇〇をしてください。その代わりに、わたしは、あなたに△△をします。」という約束をすることです。
つまり、契約書には次の要素が定められています。
② 自分が相手にするべきこと(自分の義務)
③ 相手が自分に請求できること(相手の権利)
④ 相手が自分にするべきこと(相手の義務)
これらが記載されていなければ、自分と相手がこの契約によって何ができるのかが明らかになりません。
自分の権利義務、相手の権利義務が記載されているかチェックしましょう。そして、チェックしながら、契約内容が自分の目的を達成できるものになっているか確認しましょう。
4. 契約内容の詳細が正確に記載されていること
自分の権利義務と相手の権利義務が記載されているとしても、その内容が正確に記載されていなければ、具体的に実行することができません。
たとえば、次のような契約内容の詳細が正確に記載されているかチェックしましょう。
② 動産に関する契約:品物の品名、型番、数量
③ サービスに関する契約:具体的なサービス内容
特に、金額の記載があいまいな契約書はトラブルのもとになります。1個あたりいくらなのか、合計金額はいくらなのか、税込・税抜のいずれなのかなど、細かいところまできちんと記載があるかチェックしましょう。
5. 履行期日や契約期間が明確に記載されていること
こちらも内容の正確性に関わることですが、商品の引渡しの期日や、賃貸借の契約期間など、明確に記載されているかチェックしましょう。
これらが明確でなければ、結局いつ商品を受け取ることができるのか、代金はいつまでに支払えばよいのかなどが不明確になり、契約の内容が実現できなくなってしまいます。
特に、建物の賃貸借などにおいては、契約期間は極めて重要です。記載に不備がないか確認しましょう。
6. 完全合意条項が設けられていること
完全合意条項とは、この契約書に記載されている内容だけが合意の内容であり、記載されていない合意は無効であることを定めた条項のことです。
たとえば、「本契約は、本契約で取り扱われた事項に関する当事者間の完全かつ唯一の合意を構成するものであり、書面であろうと口頭であろうと、当事者間に存在するすべての従前の合意は効力を失うものとする。」といった条項です。
契約の締結にいたるまでには、どのような内容にするかを決めるために交渉が行われることがあります。交渉の過程では、契約書には記載されなかったものの、両者の暗黙の了解で認識しあった事項が生じることもよくあります。こういった契約書に記載されていない事項を持ち出されると、「言った・言わない」のトラブルに発展してしまうリスクがあります。
完全合意条項を設けることで、契約書に記載されていない不当な要求を受けることを防止できます。特に、交渉の過程を経て作成される契約書には、この条項が設けられているかチェックしましょう。
7. 条項間の論理的な矛盾や全体としての整合性が取れていること
よくある例としては、相手を「甲」、自分を「乙」と定義したにもかかわらず、後半では自分を「甲」、相手を「乙」とする記載になってしまうというケースです。このような記載は、条項間に論理的な矛盾を生じさせてしまい、トラブルの原因になります。
また、「品名:〇〇 型番:A(以下、『本商品』という。)」と定義しているのに、他の条項で「本製品」という記載を使ったり、型番:Bの品物を「本商品」と記載したりするなど、用語の使用にブレ(ゆれ)があると、全体の整合性を欠いてしまい、合意内容が不明になってしまいます。
全体を通して読み、条項間の論理的な矛盾や全体としての整合性が取れているかチェックしましょう。
8. 誰が読んでも同じ意味に捉えられる明確な表現が用いられていること
複数の解釈ができる用語には注意が必要です。用語の定義が明確で、誰が読んでも同じ意味に捉えられるかチェックしましょう。
とはいえ、明確な表現を用いるというのは、簡単なことではありません。なぜなら、日常的に使う言葉が法律上では別の意味になってしまうということがあるからです。
たとえば、「善意」「悪意」という言葉があります。法律上では、「善意」は「ある事実を知らないこと」、「悪意」は「ある事実を知っていること」という意味になります。
このように、日常的な意味では明確であっても、法律上では意味が異なることがあるため、専門家である弁護士のチェックも必要なポイントといえます。
9. 契約解除の条件が明確に記載されていること
ここからは、かなり専門性の高い内容になります。
契約をしたものの、相手が契約に違反した場合(代金を支払わない、商品を引き渡さないなど)には、速やかに契約関係を解消できることが重要です。
民法という法律には、契約解除のルールが定められています。そのため、わざわざ契約書に記載しなくても、契約違反があれば契約を解除して終わらせることが可能です。
しかし、民法の契約解除では、基本的に、相手に一度契約内容の実現を求めて、相当の期間待たなければなりません。
このような手間をかけずに、もしものことがあれば速やかに契約を解除できるよう、解除ができる場合が明確に記載されているかチェックしましょう。
10. 損害賠償・違約金の条項が著しく不利な内容ではないこと
これまでに挙げたポイントに注意して契約を締結しても、トラブルに発展してしまうことがあります。
そうなった場合に、自分が思いもよらない違約金の支払いを求められたり、相手の損害賠償責任が免除されたりするような契約内容では、適切な解決が図れません。
自分がどのような場合に、違約金をいくら支払うことになるのかきちんと確認しましょう。相手の損害賠償については、「甲は、損害賠償責任を負わない。」「賠償額の上限は○円である。」などの記載には注意が必要です。
内容によっては、法律上無効となる可能性もあります。もしもの場合に、自分が負うリスクや相手に追及できる責任の内容を把握しておく必要があります。
かなり専門的な判断が必要になるため、あわてずに弁護士に相談することをおすすめします。
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11. 契約内容が適法であること
当事者間で合意した内容であったとしても、法律に違反している契約は無効になることがあります。
たとえば、事業者が損害賠償責任を負わない条項や消費者に過大な違約金の支払いを予定する条項は、消費者契約法により無効となる可能性があります。
無効な条項であれば、放置していてもよいということではありません。一度合意してしまうと、相手は合意したことを理由として、義務の履行を求めてくることもあり、無効であるといって争うこと自体が大きな負担となります。
そもそも、トラブルにならないことが一番ですので、無効な条項があれば、排除・修正することが重要です。
12. まとめ:悩んだら弁護士に相談
契約書にサインする前に、まずは自分で10のポイントをチェックしてみましょう。
しかし、後半で解説した解除や損害賠償、法律用語の定義などの項目には、専門的な判断が必要です。
AIなどの結果や自己判断だけに頼らず、少しでも不安があればサイン前に弁護士へご相談ください。専門家のリーガルレビューにより契約トラブルを未然に防ぐことができます。
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執筆: 弁護士 杉山賢伸