自筆証書遺言の重要チェックポイント
1. 自筆証書遺言とは
生前の相続対策として遺言書を作成された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご自身で作成した遺言書は法律上「自筆証書遺言」と言います。これは相続発生後にその効力が発生します。
もっとも、その記載内容によってはかえって相続人の間でトラブルを発生させてしまうおそれもあります。
そこで、ご自身の思いに沿った、争いの起きにくい遺産相続を実現させるために、自筆証書遺言を作成する際にこれだけはチェックしておきたい7つのポイントを解説いたします。
2. 財産がもれなく記載されているか
まずは、ご自身が保有する財産すべてについて記載されているか確認しましょう。
遺言書に記載されなかった財産は、法律に従って遺産分割されることになるため、結局争いが生じてしまうおそれがあります。
3. 共同遺言になっていないか
共同遺言とは、2人以上の者が同一の書面で遺言を行うことです。しかし、遺言書にはご自身の遺言しか残すことができません。
同じ遺言書に配偶者の方と共同で遺言を残すと、その遺言書は無効となってしまいます。
4. 全文、作成日、氏名は自書されているか
自筆証書遺言は、全文、作成日、氏名をご自身の手で記載する必要があります。
作成日も「〇月吉日」といった記載ではなく、作成日を明確に記載しましょう。
5. 実印が押されているか
法律上は印であれば、認印や拇印でも問題ないとされています。
しかし、遺言書は遺産の行先を決める重要な書類ですから、トラブル防止のために実印を使用することをお勧めします。
6. 誰に何を相続させるか、明確に記載されているか
一番重要な相続についての記載です。
「誰に」「どこにある」「どの財産を相続させるのか」明確に記載されているでしょうか。
通称や愛称で記載してしまったり、「軽井沢の別荘」といった記載だけだと、トラブルのもとになりかねません。
お名前はフルネームで、土地建物であれば所在や地番を記載するなど、第三者にも明確に伝わる記載にすることが重要です。
7. 誤字・脱字がないか
遺言書は誤字・脱字があった場合、修正することができます。
しかし、あまりに修正が多いと結局何が書かれているのかよくわからなくなってしまうおそれもあります。
また、誤字・脱字があると、ご家族は文面から正しい内容を推測する必要があります。この解釈が分かれて争いに発展するおそれがあります。
誤字・脱字のない遺言書を作成しましょう。
8. 子や配偶者が財産を全く取得できない内容になっていないか
遺言書を作成される方には、配偶者の方や特定のお子様だけに全財産を相続させたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、配偶者と子(そして親)には、最低限の遺産相続が認められています。遺留分という制度です。
そのため、例えば相続人がお子さん二人であったとして、一方に全財産を相続させるという遺言を残したとしても、もう一方は法律に従った割合で遺産を取得できる可能性があります。
したがって、このような内容の遺言は争いの元になりかねません。
関連情報
9. 専門家への相談をおすすめ
遺言書はご自身の最後の意思を残せる重要な書面である一方、かえって争いの原因となることもあります。
遺言書は何度でも作り直すことができますので、一度専門家からのアドバイスを受けることをお勧めいたします。
関連情報
執筆: 弁護士 杉山賢伸