千葉県社会保険労務士会千葉支部様からお声がけいただき、研修を実施しました。
労使紛争の傾向、交渉・和解・訴訟に至るプロセスなどを具体的に紹介しながら、会社側弁護士の立場から、「社会保険労務士が顧問先にアドバイスを行う際の注意点」を解説しました。

研修を開催した背景と目的
社会保険労務士の先生方は、顧問先からの様々な労務相談に日々対応されています。
しかし、労働事件が紛争化した後の対応は、弁護士の専門領域です。
よつば総合法律事務所では、多くの社会保険労務士の先生方から顧問契約をご依頼いただいていることもあり、以下の相談を受けることが多いです。
- 「この案件は、最終的にどのような解決になりそうか」
- 「交渉で決裂した場合にはどうなるのか」
- 「弁護士はどのような目線で交渉をしているのか」
- 「労働審判や訴訟のスケジュールや手続はどうなっているのか」
社会保険労務士の先生方が、顧問先に適切なアドバイスをするためには、上記のような「紛争化した後の対応」に関する目線も有する必要があります。
そこで、村岡のこれまでの経験を踏まえ、書籍などであまり公開されていない「労務紛争の本当のところ」を、余すことなくお話させていただきました。
今回の研修が、ご参加いただいた先生方にとって少しでも有益なものとなりましたら、大変幸いです。
研修の内容
① 労務トラブルはどのように顕在化するのか?
労務トラブルは「退職時」や「退職後」に顕在化するケースが圧倒的に多いです。
例えば、有休取得の拒否や最終給与の未払いなど、「退職時」の不適切な対応が、労働者側の不信感を招き、そのまま労使紛争を招くケースがあります。
また、退職時の不適切な対応が、予想外の大きな金銭リスクに繋がることがあります。
例えば、「有休取得を拒否されたことに納得がいかず、労働者が弁護士に相談したところ、残業代請求が可能であることが判明した」というのは典型的なパターンです。
② 「相談を受けた」弁護士の目線は?
「この程度の案件で弁護士就きますか?」との相談を受けることも多くあります。
これは労働事件に限られないですが、相談を受けた多くの弁護士は、勝訴見込と、相談者にとっての経済的メリットを考慮して、その事件を受けるかを検討します(私見です)。
例えば、何も理由がないのに最終の給与が支払われていない、との相談を受けたとします。
純粋な給与不払いと考えると、勝てる可能性は高そうです。しかし、弁護士費用と天秤にかけた場合、最終給与を回収するために弁護士に依頼することは、経済的メリットが乏しいこととなります。
ただし、「最終給与の支払交渉」のみで弁護士が依頼を受けることは中々難しそうですが、他に請求できるものがあれば、また目線は変わります。
例えば、別途数百万円の残業代請求ができるのであれば、相談者にとっても経済的メリットが大きいので、弁護士が依頼を受けることも可能になってきます。
このパートでは、解雇、退職勧奨、残業代、労災、パワハラなどの事件類型ごとに、相談を受けた弁護士が「どのような目線を持つか」を解説しました。
③ 弁護士間交渉の実情は?
もちろん、「依頼者の意向」が最も重要ですが、弁護士間の交渉では「どこかで和解できないか」を常に意識しながら話し合いが進められることが多いです。
ただし、例えば会社側が「0回答」に固執したり、解雇事案で労働者が復職や会社の謝罪に強くこだわっている場合などは、和解が困難なことも多くあります。
④ 和解した場合/和解しない場合にはどうなるか?
交渉の結果、和解が成立した場合には、合意書を取り交わして解決となることが多いです。
合意書には、「紛争の内容や解決内容を外部に公開しない」という、守秘義務条項が設けられることが多いですが、この守秘義務条項に違反した場合であっても、責任追及は中々難しいのが実情です。
和解が成立しない場合には、労働審判や訴訟に移行することが多いですが、訴訟などに移行しないまま、事件が自然消滅となるケースもあります。
⑤ 労働審判・訴訟のスケジュールや負担感は?
労働事件の場合、紛争解決手段として、労働審判か訴訟のいずれかが選択されることが多いです。
労働審判は原則3回以内で終結するため、比較的早期解決が期待できます。しかし、特に会社側の事前準備の負担は大きく、決して楽な手続ではありません。
訴訟の場合、解決までに1年以上かかるケースも多いです。書面作成や尋問準備のための打ち合わせなど、弁護士だけでなく、会社側の負担も非常に大きいです。
このパートでは、村岡が実際に経験した労働審判・訴訟事件を題材に、具体的なスケジュールや準備すべき作業などを解説しました。
⑥ 解決金の相場は?
明確な「相場」は存在しないものの、勝敗見込みや判決になった場合の認容額、会社の経済状況、当事者の意向などを総合的に考慮して、解決金を検討することが多いです。
特に解雇事件では、解決までの時間が長引けばバックペイ(未払賃金等)の額も膨らむので、解決金も高額になる傾向にあります。
⑦ その他-こんな質問を受けた場合は?
その他のよくある相談として、労働局のあっせんや調停対応、退職従業員への請求、従業員貸付をおこなう際の注意点、従業員の給与が差し押さえられた場合の対応などについて解説しました。
おわりに
よつば総合法律事務所では、今回の研修をはじめ、士業向けの研修講師を多く担当しております。例えば、以下の研修がございます。
① 税理士様向け研修等
② 社会保険労務士様向け研修等
③ 弁護士向け研修等
他多数
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またよつば総合法律事務所では、多くの士業事務所様より顧問契約をご依頼いただいており、士業事務所専門の顧問サービスもご用意しております。
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