千葉県SR経営労務センター様よりお声がけいただき、社会保険労務士の先生方を対象に、採用・退職を巡る諸問題に関する研修を行いました。
研修を開催した背景と目的
会社側の労働案件を多く取り扱っている専門家として日々思うのは、「労務トラブルの大半がミスマッチに起因している」ことです。
労務トラブルになってしまった事案で、経営者に話を聞くと、多くのケースで「採用時から〇〇という不安はあった」との言葉が出てきます。
また退職後は、会社と労働者の関係性は希薄になります。在職中に抱えていた労働者の不満が、退職をきっかけにあふれ出すことも多いです。残業代や慰謝料などの請求の多くは、退職後になされます。
そのため、労務トラブルを予防する観点からは、「どのような形で退職するか」も非常に重要です。
このような問題意識を背景に、労務対応の専門家である社会保険労務士の先生方に対し、採用時・退職時のよくあるトラブルや注意点を解説しました。
今回の研修が、ご参加いただいた先生方にとって少しでも有益なものとなりましたら、大変幸いです。
研修の内容
採用に関する諸問題
① 採用面接時の注意点
会社から、「採用面接で、何をどこまで聞いて良いのか分からない」「センシティブな質問を面接時に聞きづらい」といった相談をよく受けます。
会社は、誰を雇うかを自由に決定することができます。採用の前提として、求職者の情報を広く調査することもできます。
しかし、会社に採用・調査の自由がある一方で、職業安定法、男女雇用機会均等法、個人情報保護法などの法令において、「聞いてはいけない事項」「聞くべきではない事項」がそれぞれ定められています。
会社としては、まずはこれらの法令を正確に理解した上で、「どのような質問をするか」を採用面接の前に予め検討しておくことが重要です。
また、中々聞きづらい事項については、「採用面接質問票」などを活用し、任意に回答してもらうのがよいでしょう。
② 採用問題Q&A
採用に関して、よく質問がある次のような事項を解説しました。
Q. 求職者から不採用の理由を聞かれたが、回答すべきか。
Q. 労働者が職歴・学歴を偽っていた場合、解雇できるか。
Q. 労働者が病歴を偽って(詐称して)入社した場合、解雇できるか。
特に、面接時には明らかでなかったものの、入社してから本人の健康面の問題(メンタルヘルスなど)が明らかになるケースは多いです。慎重な対応が必要です。
退職に関する諸問題
労働関係の「出口」の問題として、退職に関する次の事項を話しました。
① 退職勧奨について
② 退職代行の諸問題について
③ 会社から退職労働者への損害賠償について
会社から特に相談が多いのは、退職労働者への損害賠償請求です。具体的には次のようなご相談です。
「労働者が交通事故を起こし、社用車が損傷した」
「引継をしないまま急に退職した」
「労働者が退職後に競業行為をしている」
このようなご相談があった場合、まずは「損害賠償請求ができるケースか」を慎重に検討します。これに加えて、「労働者から何かしらの請求を受けるリスクがないか」も検討する必要があります。
典型的なのは未払残業代請求です。会社が100万円の損害賠償請求をしたところ、逆に労働者が500万円の未払残業代を請求してきたケースもあります。慎重な対応が必要です。
おわりに
よつば総合法律事務所では、今回の研修をはじめ、士業向けの研修講師を多く担当しております。たとえば、次のような研修がございます。
① 社会保険労務士様向け研修等
② 税理士様向け研修等
③ 弁護士向け研修等
他多数
また、よつば総合法律事務所では、多くの士業事務所様より顧問契約をご依頼いただいており、士業事務所専門の顧問サービスもご用意しております。
ご興味のある士業団体様、士業事務所様は、お気軽にお問合せください。