千葉県弁護士会の労働問題対策委員会が主催する定期的な研修会の講師を担当しました。
労働者側代表の弁護士と共に、残業代について解説をしました。
この講義では、講義のために作成した架空の事例をもとに、労働者側、使用者側の視点からどういう点に気を付けて主張立証をしていくかについて、詳しい解説を行いました。
残業代を代表とする労働事件は、慣れていないとミスをしがちな分野です。法律のルールが複雑ですし、主張すべき具体的な事実関係や証拠の内容も多岐にわたります。
しかし、この講義を聞けば、労働事件をやったことがない弁護士の方でも、一通りは対応できるような充実した講座になるよう心掛けました。
弁護士会が実施する講義としては珍しく多数の事前申し込みがあり、弁護士の労働事件に関する関心の高さが窺われました。
また当日は雨にもかかわらず、150人ほどの弁護士の方にお集まりいただき、その人数の多さにとてもびっくりしました。
講座後に参加いただいた方から、「役に立った」「労働分野を扱おうと思った」「来年もやってほしい」「今度は解雇分野についてやってほしい」という感想が出ました。このような役に立つ講座を提供でき、やってよかったと思いました。
研修会を開催した背景と目的
労働事件は、法律の作りがやっかいであったり、細かい部分が争点になりがちであったりします。それゆえ、今まで労働分野を扱っていない場合、扱うことに抵抗が生じがちです。
このような状態ですと労働分野を扱う弁護士が限られてしまい、労働問題に悩む労働者及び使用者にとってよくないとの考えから、この講座を開きました。
また、この講座をきっかけに、労働事件を扱う弁護士が増えることだけではなく、労働事件を扱う弁護士のレベルを高めることも目的に開催されました。
研修の内容
1. 残業代請求の基礎知識
① そもそも残業代とは?
② 残業代の割増率について
③ どういう場合に割増が発生するのか
2. 残業代計算の仕方
① エクセルを用いて、残業代を計算する方法
② エクセルの式の組み方
③ 残業代計算における注意点、間違えやすいポイント
3. 労働者側からみた残業代請求事件
① 労働者として主張すべきポイント
② 典型的争点に関する攻撃方法
③ 典型的争点に関する最近の判例の傾向
④ その他労働者側の弁護士として注意すべきポイント
4. 使用者側からみた残業代請求事件
① 使用者側として主張すべきポイント
② 典型的争点に関する防御方法
③ 典型的争点に関する最近の裁判例の傾向
④ その他使用者側の弁護士として注意すべきポイント
5. 事例をもとにした訴状、答弁書の記載方法
① 訴状の具体的な記載方法の例
② 答弁書の具体的な記載方法の例
③ 法律のルールの適切な理解が重要
④ 過去の裁判例の適切な理解が重要
⑤ 個別具体的な事案を踏まえた具体的な事実の主張が重要
⑥ 具体的な事実を裏付けする証拠が重要