社会保険労務士の先生の勉強会にお声がけをいただき、外国人雇用の実務やユニオン対応について、1時間半にわたり具体的な事例を元にお話をさせていただきました。
具体的には、次のような内容を解説しました。
- 外国人労働者の受入れ状況
- 管轄や準拠法
- 在留資格
- 技能実習制度と特定技能
- 外国人と労働条件
- 言葉をめぐる労働紛争
- 労災や損害賠償
- 資格外就労や不法就労
- 技能実習生に関する問題
- ユニオン対応
研修会を開催した背景と目的
外国人労働者の数が増えつつある現状で、企業と外国人労働者との労務トラブルが多くなっています。
社会の変化に応じて社会保険労務士の先生が取り組むべき領域も変わっていくこともあるため、本研修会を開催しました。
研修会の内容
1. 外国人労働者の受入れ状況
① 外国人労働者の人数
在留外国人数は約273万人(平成30年末時点)、外国人労働者数は約146万人(平成30年10月末時点)です。増加傾向にあります。
② 外国人労働者の特徴
専門的・技術的分野の在留資格は約19%にとどまり、技能実習は21.1%、資格外活動は23.5%と、いわゆる単純労働者の受け入れが多いのが実情です。
2. 管轄や準拠法
① 国際裁判管轄
日本の裁判所で裁判をできる場合とできない場合を解説しました。
② 準拠法
日本の法律に基づいて判断できる場合とできない場合を解説しました。
3. 在留資格
在留資格とは、外国人が適法に日本に滞在するために取得しなければならない入管法上の資格です。就労の可否をふまえて在留資格を解説しました。
4. 技能実習制度と特定技能
開発途上国などの外国人を日本で一定期間に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転することで、将来の経済発展を担う人づくりに協力するという国際貢献を目的とした制度である技能実習制度について解説しました。
技能実習制度の一般的な説明から、企業単独型・団体管理型という受入形態について、技能実習の実際の流れについても解説しました。
中小規模事業者の深刻化する人手不足を解消し、即戦力となる外国人材を受け入れる制度である特定技能についても解説しました。
5. 外国人と労働条件
外国人の労働条件の注意点として、次のような点を解説しました。
- 労働契約書などの基本的な資料がない。
- 言語の問題から、自分の労働条件を明確に認識していない。
- 労働法規に関する理解不足から、労働法規に違反した労働条件で労働者が就労している。
- 雇用期間や賃金、配置転換、日本人従業員との差別的取り扱いなどが問題となりやすい。
6. 言葉をめぐる労働紛争
外国人労働者の日本語能力不足を理由とする解雇や降格が問題となることがあります。
もっとも、外国人労働者の日本語能力不足を理由とする解雇や降格は、次のような理由から無効となることが多いことを解説しました。
- 外国人労働者が日本人に比べ日本語能力が低いことは当然であること
- そもそも、日本語能力を要求されない職種での採用であること
- 会社は面接や試用期間中に日本語能力を判断することができること
- 雇用期間が長期間に及んでおり、それまでに日本語能力が問題とされず仕事をしていたこと
- 会社が日本語教育をしていなかったこと
7. 労災や損害賠償
① 労災保険の適用対象
外国人であっても国籍や在留資格を問わず労災保険の適用対象であることを解説しました。
② 外国人労働者の損害賠償の問題点
外国人労働者の場合、逸失利益や慰謝料が特に問題となる可能性があることを解説しました。
8. 資格外就労や不法就労
次のような問題点を解説しました。
- 外国人が在留資格を有していなかった場合の問題点
- 在留資格上の就労制限に反して就労していた場合の問題点
- 不法就労の外国人の解雇の問題点
9. 技能実習生に関する問題
次のような問題点を解説しました。
- 寮費の控除
- 技能実習生の解雇
- 技能実習生の雇止め
- 強制貯金(技能実習生の意思に反する貯金)
- 強制帰国(技能実習生の意思に反する帰国)
- 旅券や在留カードを会社が保管することの可否
10. ユニオン対応
実際に担当した外国人労働者のユニオン対応について、具体例を踏まえたお話をさせていただきました。
特に外国人労働者については、外部の労働組合に加入して企業に団体交渉を申し入れるケースが多く見られるため、注意が必要です。