相続の専門家である相続アドバイザーの皆様に向けて、遺言が無効になる場合を解説しました。
勉強熱心な方が多く、質疑応答等もあり、非常に盛り上がりました!
皆様いつもありがとうございます。
セミナーを開催した背景と目的
遺言書は特殊な書類です。手続きの不備などの理由により無効となることがあります。
そして、遺言が無効になってしまうと、故人の意思を尊重することが難しくなってしまいます。
そこで、遺言をめぐる不毛な争いを避けていただきたいとの想いから、遺言の無効について解説しました。
セミナーの内容
1. 遺言能力
遺言能力とは、遺言者が遺言の際に、遺言内容及びその法律効果を理解・判断するために必要な意思能力です。
遺言能力のない遺言書は無効となります。そして、遺言能力は次のような要素を考慮して判断します。
- 精神上の障害の存否・内容・程度
- 年齢
- 遺言前後の言動や状況
- 遺言作成に至る経緯(遺言の動機や理由)
- 遺言の内容
- 相続人等との人間関係
そのため、遺言書を作成するときは、本人の能力を慎重に見極めて手続きを進める必要があります。
2. 自筆証書遺言の無効
① 自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして、押印をする遺言です。
② 他人が添え手をして作成した自筆証書遺言
他人が添え手をして作成して自筆証書遺言は、無効になる可能性が高いです。
たとえば、自筆証書遺言の効力が争われた最高裁判所の判決(昭和62年10月8日)の判断は次のとおりです。
- 他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言は、補助が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされていて単に筆記を容易にするための支えを借りたにとどまるなど添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できる場合は有効となる。
- そして、個別の事実関係を踏まえると、文字が整然と書かれていて、添え手をした人の意思に基づき遺言書が作成されていると判断されるため、遺言は無効である。
そのため、添え手をした遺言書を作成するときは、慎重に手続きを進める必要があります。
3. 公正証書遺言の無効
① 公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって作成する遺言です。
② 口授のない公正証書遺言
公正証書遺言では「口授」が必要です。口授とは口頭で伝えることです。
どの程度まで明確に口頭で伝えることが必要かが争いになることがあります。特に、「はい」「それでよい」という程度の発言はできるものの、詳しい遺言の内容までは発言できないときは深刻な争いになることがあります。
そのため、口頭で明確に遺言の内容を伝えることが難しいときは、事前に弁護士に相談するなど慎重に手続きを進めましょう。