「使用者側弁護士が語る!労務リスクに備える!新時代の労務管理」というテーマで、次の内容を中心に解説しました。
たくさんの士業及び企業様にご参加いただきました。
セミナー開催を開催した背景と目的
新型コロナウィルスの蔓延により、従業員の罹患が増えています。多数の企業様が対応で悩んでいます。
そこで、新たな感染症を踏まえた新時代の労務管理というテーマでセミナーを開催しました。
また、従来から相談の多い、未払い残業代や不当解雇などの問題も重要なテーマです。
新型コロナウィルスという新たなテーマとよくある労務問題の両方を解説することで、より多くの企業様や士業様に役立つ情報発信ができればという思いでセミナーを開催しました。
セミナーの内容
1. 新型コロナウィルスと会社の責任
会社には「安全配慮義務」といって、従業員の安全に配慮する義務があります。安全配慮義務に違反すると、会社が賠償責任を負うことがあります。
そこで、新型コロナウィルスなどの感染症についても、会社側で適切な対応をしないと会社が責任を負う可能性があることを解説しました。
あわせて、会社の適切な対応とは何かについても解説しました。具体的には次の内容です。
- 従業員の罹患が疑われるときの対応
- テレワークなどの在宅勤務と労務管理
- ワクチン接種の問題
2. 未払い残業代のリスク
① 固定残業代のリスクを事例で解説
<社長からの質問>
弊社では、残業時間を見越して、給料の設定を行っています。具体的には、「基本給30万円の中に45時間分の残業代を含む」と契約書に記載しています。
しかし、最近従業員から、未払いの残業代を精算してほしいという不満の声が出ています。残業時間を見越して給料を設定しているので、未払い残業代は発生しないと説明する予定ですが、問題はありませんか。
<弁護士の解説>
固定残業代とは、一定時間分の時間外労働等に対して定額で支払われる残業代のことです。
固定残業代の制度が認められるためには要件があること、固定残業代の有効要件を満たさないと会社としては支払ったはずの残業代を再度支払わないといけないリスクがあることを解説しました。
② 管理監督者のリスクを事例で解説
<社長からの質問>
弊社で、管理職を務めている社員から、「残業代が支払われていないのはおかしい」と不満の声が出ています。
管理職に昇進させる際に、管理職は残業代が出ないことを丁寧に説明しており、契約書にもその旨を記載しています。そのため、弊社としては対応する必要がないと考えていますが、問題ないでしょうか。
<弁護士の解説>
「労働基準法上の管理監督者」と「社内の役職としての管理職」の意味は異なります。そのため、管理職であっても残業代を支払わないといけないケースが多いことを解説しました。
3. 不当解雇のリスクを事例で解説
<社長からの質問>
問題のある社員Aを雇用してしまい、大変な思いをしています。
Aは、頻繁に遅刻してきます。また、出社しても、仕事中にスマートフォンを触って真面目に仕事をしません。
注意や指導をしてもぜんぜん悪びれる様子もなく、「はーい。次から注意します」という始末。
Aを懲戒解雇したいと思うのですが、問題はありませんか。
<弁護士の解説>
①解雇には懲戒解雇と普通解雇等があること、②解雇するための要件は厳しいこと、③相談事例では解雇するのは法的にリスクが高いことなどを解説しました。
4. 業務委託契約の注意点を事例で解説
<社長からの質問>
採用時点では人柄がよく分からないことが多いです。
今後は、形式上は雇用契約ではなく、業務委託契約として採用したいのです。これで労務リスクは減りますか。
<弁護士の解説>
雇用と業務委託は、契約書の名前ではなく、実態で判断されます。そのため、雇用契約ではなく業務委託契約を締結するためには、実態も変更する必要があります。
5. まとめ:労務の問題は抱え込まずに専門家に相談
労務の問題は、一人で抱え込んでも解決しないことが多いです。早めに専門家にご相談いただくことが重要であることを改めて解説しました。