千葉県内の大規模医療法人にて、医師や管理職約60名を対象とした研修を開催しました。
主として医療介護現場におけるハラスメント対策を解説しました。特に、パワーハラスメント、カスタマーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントの4つのテーマを取り上げました。
講義終了後には、30分ほど質疑応答の時間を設けました。質疑応答では、多くの方からご質問がありました。いずれの質問も、現場の経験を踏まえた素晴らしい質問でした。
医師や管理職の皆様の遵法意識の高さや、「職場をよりよい環境にしたい」という思いを強く感じた研修となりました。
研修を開催した背景と目的
近年ハラスメントにまつわるニュースが頻繁にテレビやネット上で話題にあがっています。また、弁護士として、社内におけるパワハラやセクハラのご相談を受ける機会が多くなっています。
特に、管理職の方から、適切な指導とパワハラの区別がつきにくく、部下の指導や教育に支障が出ているというご相談が増えています。
そこで、ハラスメント問題の正しい理解のうえで、ハラスメントの予防と対処法を理解していただきたく、管理職向けに研修会を開催しました。
研修の内容
1. ハラスメント問題の概要
① 研修の意味とその目的
② ハラスメントの定義
③ 実務から見たハラスメント問題の実情と深刻さ
④ ハラスメント問題に関する最近のニュースの紹介
⑤ 統計データから分かるハラスメント問題の現状
2. パワーハラスメント
① パワーハラスメントとは
職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害される行為がパワーハラスメントです。
② 「優越的な関係を背景とした言動」の意味
- いわゆる「逆パワハラ」の成否と対応策
- 「逆パワハラ」の裁判例の紹介(東京地方裁判所平成22年11月26日判決)
③ 「業務上必要かつ相当な範囲」の問題(適切な指導とパワーハラスメントの線引き)
- パワーハラスメントの6類型(身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)
- パワーハラスメントの判断基準
- ケーススタディ1:動画から見る上司の指導の適否
- ケーススタディ2:裁判例からみるパワーハラスメントの認定の成否(松山地方裁判所平成20年7月1日判決、高松高等裁判所平成21年4月23日判決)
④ 注意指導の注意点
- パワーハラスメントと言われない注意指導の8つのポイント
- 適切に注意指導をしても聞き入れない部下への対応
⑤ 退職勧奨の注意点
- 退職勧奨の説明と実務上の注意点
- 退職勧奨による合意退職と解雇の違い
⑥ 上司や会社の対応方法の注意点
- 部下からパワーハラスメントや人間関係の相談を受けた際の上司の対応
- パワーハラスメントが発生したときの問題点
- 民事上の責任、刑事上の責任、社会的地位・信用の喪失に注意
3.カスタマーハラスメント
① カスタマーハラスメントの実例
② カスタマーハラスメント問題に関する社会の流れ
③ カスタマーハラスメントの対応の流れ
- 事実関係の把握
- 必要な対応策の検討
- マニュアル化や事例の共有
④ 事実関係の把握の注意点
⑤ 加害者への警告
- 加害者への警告文の具体例
- 加害者に作成してもらう誓約書の具体例
⑥ 利用契約の解除とトラブル対応
- 利用契約書の内容の確認
- 利用契約の解除の注意点
- 利用契約の解除についての裁判例の紹介(東京地方裁判所平成27年8月6日判決)
⑦ 弁護士による介入のメリット
⑧ 警察との連携の必要性
4. セクシャルハラスメントについて
① セクシャルハラスメントの定義
② 実務上よくあるセクハラ事例の紹介
③ セクシャルハラスメントの判断基準
④ セクシャルハラスメントをしないための大事な視点
5. マタニティハラスメントについて
① マタニティハラスメントの定義
② マタニティハラスメントの具体例の紹介
③ マタニティハラスメントと業務上の必要に基づく許される言動の線引き
④ マタハラ防止法の内容