近時の重要労働裁判例と労使トラブルの傾向・実態

開催日時:
2023年01月25日 14:00 〜 16:00
セミナー分類:
企業法務
主催:
千葉県社会保険労務士会千葉支部様
講師:
村岡 つばさ 村岡 つばさのプロフィール
対象者:
社会保険労務士の先生

近時の重要労働裁判例と労使トラブルの傾向・実態

セミナー報告

千葉県社会保険労務士会千葉支部様よりお声がけいただき、近時の重要裁判例や、労使トラブルの傾向・実態に関する研修を行いました。

約150名の社会保険労務士様にご参加いただきました。ご参加いただいた先生方、ありがとうございました。

研修を開催した背景と目的

特に労働事件は、「判例」「裁判例」が非常に重要です。

法律自体は何も変わっていないものの、裁判所の「考え」が変わった結果、同じ事実経過でも結論が変わってくることがあります。

たとえば、固定残業代の問題はその最たる例です。

法律上、「どのような要件を満たせば、固定残業代が有効になるか」は何ら定められておりません。固定残業代が有効となるためには、対価性、明確区分性といった要件が必要と考えられていますが、これは全て「裁判所の解釈」(判例)に基づくものです。

そのため、労務対応の専門家である社会保険労務士の先生方も、最新の重要裁判例をキャッチアップする必要があります。

このような背景から、近時の重要裁判例や、労使トラブルの傾向・実態を解説する研修を行いました。

今回の研修が、ご参加いただいた先生方にとって少しでも有益なものとなりましたら、大変幸いです。

研修の内容

労使トラブルの傾向・実態について

① 使用者側代理人としてここ最近感じていること
まずは雑感として、使用者側の代理人として日々感じていることをお話しました。

以前と比べて、明らかに労働者側に代理人が就くケースが多くなりました。中には、請求額が100万円を下回るような残業代請求の事件もあります。

弁護士広告の解禁や、弁護士増員による弁護士間の競争が背景として挙げられるでしょう。

弁護士へのアクセスがしやすくなることは、とても良いことです。ただし、会社側にとっては、「適当な労務管理をしていると足元をすくわれる」ことを意味します。昔の会社のやり方では、今は通用しません。

時代が変わったことを認識し、今の時代に即した労務管理が必須の課題となっています。

② 残業代請求
体感でも、残業代請求の件数は非常に増えています。

件数だけでなく、請求金額も増えています。残業代の時効が、2年から3年に延長されたことが理由として挙げられます。

単純計算で請求額が1.5倍になっているため、会社の負担は非常に大きいです。1人当たりの請求が1000万円を超えるケースも珍しくありません。

③ 解雇・雇止め
経営者の考えと、裁判所の考えで最も乖離が大きいのが解雇問題です。

解雇のハードルは非常に高く、仮に会社が負けた場合には多額の金銭的負担を負うこととなります。

しかし、経営者はこのことを認識しておらず、カジュアルに解雇を選択してしまいます。

④ ハラスメント
件数ベースで見ると、ハラスメントに関する相談が一番多いです。

労働局が公開している統計上も、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数が一番多く、年々増加傾向にあります。

いわゆる「パワハラ防止法」の改正により、企業規模を問わず、ハラスメントに関する相談窓口を設置することが会社の義務となりました。

しかし、実際には対応できていない会社が多いのが実情です。

リソースが限られている小規模事業者にとって、ハラスメント相談窓口を設置することの負担は大きく、外部相談窓口の活用も含めて検討が必要です。

⑤ その他
その他、相談の多い事項として次の4項目を簡単に説明しました。

  • 労災
  • 休職、復職
  • 退職代行
  • 労働者への損害賠償請求

近時の重要裁判例

これまで見た各事項に関連して、次の重要裁判例を紹介しました。

1. 残業代請求に関する重要裁判例

① 土地家屋調査士法人ハル登記測量事務所事件(東京地方裁判所R4.3.23判決)

2. 解雇に関する重要裁判例

① 学校法人甲大学事件(東京地方裁判所R3.3.18判決)
② 日本郵便事件(札幌高等裁判所R3.11.17判決)
③ クレディ・スイス証券事件(東京地方裁判所R4.4.12判決)
④ 森山事件(福岡地方裁判所R3.3.9判決)
⑤ 柏書房事件(さいたま地方裁判所R4.4.19判決)
⑥ A学園事件(徳島地方裁判所R3.10.25判決)

3. ハラスメントに関する重要裁判例

① 社会福祉法人ファミーユ高知事件(高知地方裁判所R3.5.21判決)
② 京丹後市事件(京都地方裁判所R3.5.27判決)

4. その他

① 大器キャリアキャスティング・ENEOSジェネレーションズ事件(大阪地方裁判所R3.10.28判決)
② 日東電工事件(大阪高等裁判所R3.7.30判決)
③ フジアール事件(東京地方裁判所R4.5.13判決)

おわりに

よつば総合法律事務所では、今回の研修をはじめ、士業向けの研修講師を多く担当しております。たとえば、社会保険労務士の先生向けの研修では次のような研修がございます。

また、よつば総合法律事務所では、多くの士業事務所様より顧問契約をご依頼いただいており、士業事務所専門の顧問サービスもご用意しております。

ご興味のある士業団体様、士業事務所様は、お気軽にお問合せください。