2020年3月から改正民法が施行となります。大きな改正は民法ができてから120年間ではじめてです。
時効や保証など重要な変更があったため、それらの解説をしました。具体的には次のとおりです。
1. 改正民法の概要
① 民法とは
② 改正の概要
2. 改正民法の具体的な内容
① 時効制度の変更
② 法定利率の変更
③ 保証制度の変更
④ 定型約款
⑤ 意思表示の到達
⑥ 雇用関係
千葉県社会保険労務士会東葛支部に所属する社会保険労務士の先生にご参加いただきました。
セミナーを開催した背景と目的
明治29年の民法の制定後、はじめての民法の大改正がありました。
消滅時効や保証制度、法定利率など労働分野にも大きな影響が生じる改正です。
そこで、社会保険労務士の先生が顧問業務を行う上での重要ポイントを中心に解説しました。
セミナーの内容
1. 改正民法の概要
① 民法とは
民法とは、私人間の生活やルールを規律する最も一般的な法律です。
たとえば、売買契約では、支払いに関するルールや物を渡さなかったときのペナルティなどが民法で決まっています。
民法は120年間大きな改正がありませんでした。社会の変化に伴う改正の必要性が高く、今回大きな改正がありました。
② 改正の概要
重要な改正のポイントは次のとおりです。
- 消滅時効制度の改正
- 法定利率の引き下げ、変動制の導入
- 保証制度の変更
- 定型約款に関する規定の新設
2. 改正民法の具体的な内容
① 時効制度の変更
時効制度の主な変更点は次のとおりです。
- 消滅時効の援用権者
- 中断・停止事由の見直し
- 短期消滅時効制度・商事消滅時効制度の廃止
- 人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権
- 不法行為の損害賠償請求の時効期間
たとえば、労災が発生したときの会社への損害賠償請求の消滅時効の期間が変わりました。
② 法定利率の変更
従来は年5%でしたが、2020年4月1日以降に発生する債権は年3%となりました。また、商事法定利率の廃止や3年毎の変動制も導入となります。
たとえば、会社の売掛金を請求できる期限や、労災が発生したときの逸失利益の金額などに影響が生じます。
③ 保証制度の変更
保証制度の主な変更点は次のとおりです。
- 保証の基本的な内容の明文化
- 保証人に対する情報提供義務
- 個人根保証契約の見直し
- 公証人による保証意思確認の手続
たとえば、経営者が事業資金の融資を受ける際に、役員以外などの人が保証をするときは、厳格な手続きが必要となりました。
また、賃貸借契約の保証人など根保証契約を締結するときは、保証する債務の上限額の設定が必要となりました。
④ 定型約款
鉄道やバスの運送契約のように、会社が不特定多数の人と取引をするときの約款契約の要件が明確になりました。
⑤ 意思表示の到達
これまでは契約の申込みに対して、承諾の意思を発信したときに契約が成立するという発信主義でした。
民法の改正により、契約の申込みに対して、承諾の意思が申込者に到達したときに契約が成立するという到達主義になりました。
⑥ 雇用関係
次の場合には、労働者は実際に履行した労働の割合に応じて報酬を請求ができることを明文化しました。(民法第624条の2)
- 使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき
- 雇用が途中で終了したとき