2022年8月から千葉県弁護士会で導入された精神保健当番弁護士制度の対応について、制度趣旨や精神科病院として注意すべき点をQ&A方式でお話ししました。
具体的には、次のような内容をお話ししました。
- 精神保健当番弁護士制度とは?
- 精神保健福祉法38条の4の概要
- 精神保健当番弁護士の利用だという連絡があった場合
- 弁護士が主治医との面会を求めた場合
- 弁護士が病院の空き室利用を求めた場合
- 弁護士がカルテの開示を求めた場合
セミナーを開催した背景と目的
2022年8月から千葉県弁護士会で精神保健当番弁護士制度が始まりました。
弁護士から精神科病院への問い合わせが増えることが予想されるため、新制度を把握した上で適切な対応ができるよう、研修会を開催しました。
40名を超える千葉県内の精神科病院の事務長の方々にご参加いただきました。
セミナーの内容
1. 精神保健当番弁護士制度とは?
精神保健当番弁護士制度とは、精神保健福祉法に基づく退院及び処遇改善等の請求に関して、弁護士会が弁護士を派遣・支援する取り組みです。
各地の弁護士会で運用している制度であり、千葉県弁護士会では2022年8月から運用が始まりました。
2. 精神保健福祉法38条の4の概要
精神保健福祉法38条の4(退院等の請求)は次のような内容です。
(退院等の請求)38条の4
精神科病院に入院中の者又はその家族等(その家族等がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合にあっては、その者の居住地を管轄する市町村長)は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該入院中の者を退院させ、又は精神科病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる。
3. 精神保健当番弁護士の利用だという連絡があった場合
精神保健当番弁護士として弁護士から電話があった場合、患者本人に精神保健当番弁護士を利用したかを確認しましょう。
4. 弁護士が主治医との面会を求めた場合
精神保健当番弁護士が主治医との面会を求めた場合、応じる法的義務はありません。ただし、病院運営上の支障がなければ応じるという姿勢が無難でしょう。
5. 弁護士が病院の空き室利用を求めた場合
精神保健当番弁護士が病院の空き室利用を求めた場合、応じる法的義務はありません。ただし、病院運営上の支障がなければ応じるという姿勢が無難でしょう。
6. 弁護士がカルテの開示を求めた場合
患者本人の委任状を確認した上で、カルテ開示を行いましょう。ただし、カルテ開示に伴う一般的な費用は請求できます。
7. 退院請求や処遇改善請求があった場合
退院請求とは、精神科入院中の患者またはその保護者が、入院を不服として、都道府県知事等に対して、精神科病院の管理者に、その患者を退院させるように命じるよう請求する制度です。
処遇改善請求とは、精神病院入院中の患者またはその保護者が、入院中の処遇を不服として、都道府県知事等に対して、精神科病院の管理者に、その患者の処遇を改善させるように命じるよう請求する制度をいいます。
申立てがあると、精神医療審査会(精神保健福祉センター)での審査が行われます。