運送業者様を対象として、未払い残業代の実情、裁判での敗訴事例、会社がとるべき対応などを解説しました。具体的には次のような内容です。
- 運送業の残業代請求が増えていること
- 裁判での敗訴事例(固定残業代制度、歩合給を残業代として扱う制度)
- 給与制度変更の注意点など会社がとるべき対応
多くの運送業者様にご参加いただきました。
セミナーを開催した背景と目的
2020年4月から、残業代の時効期間が2年から3年に伸びています。また、2023年4月から、中小企業での60時間を超える残業代の割増率が25%から50%へと変わります。
運送業は未払い残業代のトラブルが発生しやすい業種です。そして、法改正により、ますます残業代のトラブルが増えることが予想されます。
そのため、今回のセミナーでは、運送業の残業代請求の実情や敗訴事例を踏まえたうえで、会社のとるべき対応を人事労務に詳しい弁護士が解説しました。
セミナーの内容
1. 運送業の残業代請求の実情
- ① 適切な人件費を設定することの重要性
- ② 残業代請求の増加
- ③ 運送業が狙い撃ちされる理由
- ④ 法改正がもたらす影響
2020年4月から残業代の時効期間が2年から3年に伸びており、単純計算でも1.5倍を超える未払い残業代が発生します。
2023年4月から中小企業での60時間を超える残業代の割増率が25%から50%へと変わることもあり、これらの法改正により、残業代のリスクはさらに深刻になります。
2. 裁判での敗訴事例
- ① 固定残業代の敗訴事例
- ② 歩合給を残業代として支払う給与体系の敗訴事例
固定残業代制度があったにもかかわらず、多額の未払残業代請求が認められてしまう事例は多いです。
また、歩合給と残業代が連動する給与体系や、歩合的な要素の賃金を残業代として支払っている給与体系もあります。このような制度も、ここ最近の裁判所の考え方を踏まえると、多額の未払残業代請求が認められてしまうことがあります。
残業代のトラブルや裁判は、会社の存続に関わる問題になってしまうこともあります。トラブルになってしまったときは専門家に相談しながら解決しましょう。
3. 会社の対応方法
- ① 制度変更の全般的な注意点
- ② 固定残業代を導入するときの注意点
- ③ 完全歩合給を導入するときの注意点
給与制度を変更するときは、次のような点に気を付ける必要があります。
- 従業員の納得感を得ること
- 入念な試算や検証をすること
- 不利益変更になるときは、原則として従業員の同意をとること
また、固定残業代や完全歩合給などのルールは複雑です。悩んだら、まずは詳しい専門家への相談をおすすめします。
4. まとめ
- ① 残業代請求のハードルは年々下がっていること
- ② 法改正もあり、運送業を取り巻く環境は厳しくなっていること
- ③ 固定残業代は危険であること。また、歩合と残業代が連動する賃金体系、歩合を残業代として支払う賃金体系も危険であること
- ④ 自社の給与体系や労働実態をまずは正確に把握すべきであること。そのうえで、自社にあった給与体系に変更すること
- ⑤ 選択肢の1つに完全歩合給制もあること。ただし、導入は簡単ではないので必ず専門家に相談しながら進めること