同一労働同一賃金対応&コロナ禍の労務対応

開催日時:
2021年01月26日
セミナー分類:
企業法務
主催:
千葉SR経営労務センター様
講師:
村岡 つばさ 村岡 つばさのプロフィール
対象者:
社会保険労務士の先生

同一労働同一賃金対応&コロナ禍の労務対応

セミナー報告

千葉SR経営労務センター様よりお声がけいただき、①同一労働同一賃金対応と②コロナ禍の労務対応の研修講師を担当しました。

同一労働同一賃金は、「最低限これは対応したい」という目線での実務対応をお話しました。

コロナ禍の労務対応は、特にご相談の多い整理解雇や退職勧奨をお話ししました。

ご参加いただいた社会保険労務士の先生方、ありがとうございました。

セミナー講師の弁護士村岡つばさ

セミナーを開催した背景と目的

2021年4月より、中小企業も同一労働同一賃金に対応する必要があります。

しかし、施行日まで3か月を切った時点でも、同一労働同一賃金に対応できていない企業が多いのが現状です。

理由としては、法律の仕組みやルール自体が非常にわかりづらい、ガイドラインが抽象的、検討しなければならない項目が多い…というものが挙げられます。

そこで、法律・判例・ガイドラインを踏まえつつ、「最低限これは対応したい」という目線から、企業が行うべき同一労働同一賃金対応をお話させていただきました。

また、新型コロナウイルスの蔓延という未曽有の事態により、多くの企業が経営に窮する自体となっています。先が見えない中で、整理解雇などのコストカットを選択する企業も増えました。

整理解雇のハードルは非常に高いため、いくら経営難だとしても容易に解雇はできません。しかし、「経営難=解雇可能」という認識の経営者もいます。整理解雇を選択したことで、かえって大幅な金銭的ダメージを受ける企業も多いのが実情です。

そこで、①整理解雇をするための一般的な注意点や流れ、②整理解雇以外の人員削減の方法である退職勧奨をお話させていただきました。

今回の研修が、ご参加いただいた社会保険労務士の先生方や、その関与先企業にとって少しでも有益なものとなりましたら、大変幸いです。

セミナーの内容

1. 同一労働同一賃金について

① 同一労働同一賃金の基礎知識
法律・ガイドライン・通達を踏まえつつ、法改正の内容や、不合理な待遇禁止の判断枠組み、判断手法について解説しました。

法改正により、有期雇用労働者も以下の規律を受けることとなりました。

  • 不合理な待遇の禁止(均衡待遇、均等待遇)
  • 労働条件に関する文書交付、説明義務
  • 行政による助言・指導や、行政ADRの対象になり得る
② 判例から読み取る各賃金項目の「相場観」

2020年10月に出た5件の最高裁判例を踏まえつつ、各賃金項目の「相場観」を解説しました。

5件の裁判例を分析した結果は次のとおりです。
・賞与、退職金
相違は不合理ではない

・各種手当、休暇など(住居手当、扶養手当、年末年始勤務手当、年始勤務における祝日給、夏期・冬期の有給休暇、有給の病気休暇、褒賞)
相違は不合理である
(今回の裁判の事例に則した判断であり、すべての事案に共通するルールではありません。)
各判例の判断のポイントや、賃金項目・条件をタイプ別に分けて相場観をお話しました。

③ 今、企業がなすべき対応とは?

企業が最低限対応すべき事項として、次の内容を解説しました。

  • 待遇差、職務内容・配置変更の範囲の相違の把握
  • 条件の相違が生じている理由の把握、説明可能かの検証
  • 趣旨に鑑み相違を設けるのが困難な項目(タイプA)の是正方法、内部説明の用意
  • 不合理な相違となる可能性が相当程度ある項目(タイプB)の是正方法、内部説明の用意
  • 会社に広い裁量が認められる項目(タイプC)のフォロー、是正方法、内部説明の用意

2. コロナ禍の労務管理

① 整理解雇
基礎知識、典型的なNGパターン、対応スケジュールなどについて、実体験や具体的事例を交えつつ、次のようなお話をしました。
・コロナ禍における整理解雇の傾向と実情
復職にこだわる労働者も多い、ユニオンが絡む事案も相当数見られる、弁護士に依頼するハードルが低い、意外に紛争化せずに終了する事案もあること

・整理解雇の定義や判断要素
人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の相当性の要件の解説

・各要素の検討、典型的なNGパターン

・こんな整理解雇には要注意

・整理解雇の対応フロー、スケジュール

② 退職勧奨

リスクの少ない人員削減の方法として退職勧奨を説明しました。

また、退職勧奨の注意点として次の解説をしました。

  • 不用意な発言は行わないこと
  • 回数・時間に注意すること
  • できるだけ即答を迫らないこと
  • 退職合意書の取り交わしを行うか、退職届を提出してもらうこと
  • 労働者に配慮した退職条件を設定すること
  • 再雇用を約束するような発言をしないこと