税理士が知っておきたい労務問題・法律問題

開催日時:
2010年12月07日
セミナー分類:
企業法務
主催:
千葉県税理士会柏支部
講師:
大澤 一郎 大澤 一郎のプロフィール
川﨑 翔 川﨑 翔のプロフィール
藤原周作

税理士が知っておきたい労務問題・法律問題

セミナー報告

当事務所弁護士の大澤・藤原・川﨑の3名で税理士の先生向けに主として労務問題について研修会講師をしました。

本セミナーに関連する質問と回答

Q 従業員が会社を辞めるパターンにはどのようなパターンがありますか?
  • ①辞職、②合意解約、③解雇があります。

【解説】

  • ①辞職とはいわゆる「退職届を出しての退職」です。従業員から辞めるという意思表示をする場合です。
  • ②合意解約とは従業員と会社の合意により契約を終了する場合です。
  • ③解雇とは使用者による労働契約の解約です。具体的には、㋐普通解雇、㋑懲戒解雇、㋒整理解雇などがあります。
Q 解雇するとどのようなトラブルが発生しますか?
  • ①従業員本人から解雇に応じられない旨等を記載した手紙が届く、②労働組合から通知が届く、③弁護士が代理して内容証明郵便が届く等のトラブルが発生します。
Q ①従業員本人から解雇に応じられない旨等を記載した手紙が届いた場合、どのように対応すればよいですか?
  • 専門家に相談しましょう。この段階で解決ができれば、早期かつ穏便な解決ができます。
  • 従業員の主張に根拠がない場合もあります。他方、従業員の主張に根拠がある場合もあります。従業員の主張を正確に分析して対応策を検討することが大切です。
Q ②労働組合から通知が届いた場合、どのように対応すればよいですか?
  • 専門家に相談しましょう。労働組合からの団体交渉申入に対して専門家抜きで対応するのは極めて危険です。作成したメモ1枚が会社経営をゆるがすような大問題となってしまうこともあります。
Q ③弁護士から内容証明郵便が届いた場合、どのように対応すればよいですか?
  • 弁護士に相談しましょう。交渉・労働審判・裁判のいずれで解決した方がよいかを検討することが大切です。

参考記事:労働審判手続(裁判所)

Q 解雇で会社が負けるとどうなりますか?
  • 法律の理屈上、①従業員の職場復帰と②争っていた期間の賃金相当額の支払が認められます。
  • 実際には、従業員が退職することを前提に一定額の賃金相当額を支払う和解により解決することが多いです。
  • 金額の相場は一律で決められるものではありませんが、労働審判では平均が150万円前後、民事訴訟では平均が300万円前後となっています。

参照元:解雇に関する紛争解決制度の現状と労働審判事件等における解決金額等に関する調査について

Q 解雇の裁判に伴って起こされる裁判はどのようなものが多いですか?
  • 残業代(割増賃金)の裁判を一緒に起こされることが多いです。
  • また、パワハラなどを理由とする損害賠償請求の裁判を一緒に起こされることもあります。

参考記事:残業代の解説

Q 労務問題でトラブルが長期化しやすい問題は何ですか?
  • 従業員が労働組合に加入し、団体交渉を継続的に申入れしてくる場合は長期化しやすいです。
  • 労働組合の団体交渉申入れを会社が断ることは原則としてできません。会社としては誠実な対応を継続しつつも、現実的な解決策を模索していくことが大切です。

参考記事:団体交渉・労働組合対応

Q 税理士の先生に解雇の相談があった場合、どうすればよいですか?
  • 基本的には慎重なアドバイスをした方がよいでしょう。
  • 顧問会社に顧問社労士や顧問弁護士がいる場合、それらの専門家に相談してもらいましょう。
  • 顧問会社に顧問社労士や顧問弁護士がいない場合、税理士の先生のお知り合いの方をご紹介してもよいかもしれません。
  • 労働問題の場合、「常識的には〇〇だろう」ということが通用しないことがあります。大きなトラブルになることが多い分野ですので丁寧な対応をお勧めします。

参考リンク