改正民事執行法について
- 開催日時:
- 2004年01月16日
- セミナー分類:
- 法律一般
- 講師:
- 大澤 一郎 大澤 一郎のプロフィール
改正民事執行法について
本勉強会に関連する質問と回答
- Q 2004年の民事執行法改正で新たに導入された財産開示制度とはどのような制度ですか?
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- 財産開示手続は,権利実現の実効性を確保する見地から,債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続です。
- 具体的には、債務者(開示義務者)が財産開示期日に裁判所に出頭し,債務者の財産状況を陳述する手続となります。
- Q どのような場合に財産開示を申立することができますか?
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- ①判決等の執行力のある債務名義の正本を有していること、及び、②知れている財産に対する強制執行をしても完全な弁済が得られないことの2つの要件が必要です。
【解説】
- 判決を有する場合だけではなく、先取特権を有する場合も申立可能です。
- Q 実際に財産に対する強制執行をしなくても財産開示の申立は可能ですか?
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- 可能です。
【解説】
- 一度財産に対する強制執行をしている場合、「強制執行をしても弁済されなかった」と認められやすくなり、財産開示の手続がスムーズに進みやすいです。
- Q 財産開示決定が出た場合、債務者はどのような書類を提出する必要がありますか?
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- 財産目録という書類を提出する必要があります。
参照元:財産目録の記載例(裁判所)
- Q 財産開示決定が出た場合、債務者は裁判所に呼び出しされますか?
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- 呼び出しされます。
【解説】
- 裁判所の手続の中で、債権者が債務者に質問をすることも可能です。
- Q 財産目録を提出しなかったり、期日に出頭しなかったりした場合、債務者はどのようになりますか?
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- 刑事罰となることがあります。
【解説】
- 6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金となることがあります。(民事執行法第213条)
- Q 相手に刑事罰を科すにはどのように進めればよいですか?
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- 警察に刑事告発をして刑事手続を進めましょう。刑事告発を正式にする前に警察に事前相談をしておくと手続がスムーズに進みます。
- Q 財産開示手続で実際に効果があった実際の取扱い事例にはどのような事例がありますか?
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事例①
- 過払い金返還請求の事案で、消費者金融が裁判に負けたにもかかわらず支払を行いませんでした。
- そのため、財産開示手続を申立しました。最終的には和解により過払い金の返還を受けることに成功しました。
事例②
- 交通事故の事案で、加害者が裁判に負けたにもかかわらず支払を行いませんでした。加害者は任意保険に加入していませんでした。
- そのため、財産開示手続を申立しました。財産開示手続には加害者や加害者の関係者が出頭していました。そのため、財産開示期日後に交渉を行い、結果的に賠償金を支払う合意をすることができました。
事例③
- 売掛金の回収の事案で、相手が裁判に負けたにもかかわらず支払を行いませんでした。
- そのため、財産開示を申立しましたが、財産目録の提出も期日への出頭もなく財産開示手続は終了しました。
- 過料申立を行い、最終的には30万円の過料(罰金)を科すことはできました。
(プライバシー保護のため、事案の本質を変えない範囲で事案を若干加工していますのでご了承下さい。)
- Q 弁護士が代理しなくても財産開示申立は可能ですか?
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- 可能です。ただし、手続が複雑ですので弁護士へ相談した方がよいかもしれません。
【解説】
- 財産開示申立書類のひな型や記載例は裁判所WEBサイトに記載があります。
参考情報:財産開示手続を利用する方へ(裁判所)