社会保険労務士事務所様と共催で、ハラスメントの初動対応に焦点を当てたセミナーを開催しました。
弁護士のパートでは、①ハラスメント問題の傾向、②企業が行うべき対応、③敗訴事例から学ぶハラスメント対応を解説しました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
セミナーを開催した背景と目的
会社側の労働案件に注力していることもあり、さまざまな労務相談を日々受けています。その中でもダントツで多いのは、ハラスメントのご相談です。
ハラスメントの問題は、どの企業にも起こる可能性がある問題です。もっとも、非常に対応が難しいのが実情です。特に「初動対応」を誤ってしまった結果、大きなトラブルに発展したり、企業が賠償責任を負うことになってしまったりするケースも少なくありません。
このような観点から、ハラスメントの初動対応に焦点を当てたセミナーを開催しました。
セミナーの内容
1. ハラスメント問題のここ最近の傾向
実際にあった相談事例や統計を交えつつ、ハラスメント問題のここ最近の傾向をお話しました。
統計で見ても、ハラスメントに関する相談は右肩上がりで増えており、ハラスメントに起因して労災認定がなされた件数も相応にあります。特に、上司と部下のトラブルが非常に多いです。
賠償リスクやレピュテーションリスク、昨今の法改正も踏まえると、ハラスメント問題に企業として適切に対応することは必須となっています。
2. 企業が行うべき対応
特にパワーハラスメントに焦点を当ててお話しました。
いわゆるパワハラ防止法の改正により、2022年4月以降は、規模を問わずパワーハラスメントに適切に対応することがすべての企業の義務となりました。
パワハラ防止法・指針を踏まえると、以下の3点の対応が必要です。
① 事業主の方針を明確にし、周知・啓発を行うこと
② 相談に応じ、適切に対応するための体制を整備すること
③ 相談があった場合には、迅速かつ適切に対応すること
また、必要な初動対応として以下をお話しました。
① ヒアリングを行う際の注意点
② 調査方法に問題があると、企業の賠償責任が認められる可能性もあること
③ 事実認定のプロセスや注意点
④ 法的評価のプロセスや注意点
⑤ 具体的処分のプロセスや注意点
⑥ 懲戒処分を科す際の注意点
3. 敗訴事例から学ぶハラスメント対応
実際の事例を踏まえて、「なぜ企業は負けたのか」「どうすれば良かったのか」という実践的な対応方法をお話しました。
特によくあるハラスメント事案の「落とし穴」として、以下の5つを説明しました。
① 「また言ってるよ」パターン
被害者が元々「問題社員」で、被害申告をまともに取り合わなかった事例です。
② 「決めつけ注意」パターン
被害者の話のみを鵜呑みにしてハラスメントと決めつけ、懲戒処分を行ってしまった事例です。
③ 「詰めが甘い」パターン
ヒアリングと事実認定までは良かったが、雑に懲戒処分を行ってしまった事例です。
④ 「結論ありき」パターン
最初から方向性を決めてしまい、その方向性に沿うような形でヒアリングや事実認定をしてしまった事例です。
⑤ 「調査やらかし」パターン
相談者のプライバシーや意向に反したヒアリングや調査を行ってしまった事例です。