千葉県生涯大学校東葛飾学園にて、地域活動専攻科の学生向けに、ボランティア活動と法的責任のセミナー講師を担当しました。
講義中、休憩時間、講義後も参加者から何度かご質問をいただき、議論が深まったセミナーとなりました。
具体的な内容は次のとおりです。
1. ボランティア活動と法的責任
① 問題となりうる責任
② ボランティア活動と法的責任に関する具体的な疑問点
③ 刑事責任
④ 民事責任
2. AEDの使用と責任
① AEDを使用したにもかかわらず死亡してしまった場合
② AEDの使用方法を間違えてしまった場合
セミナーを開催した背景と目的
近時、人手不足の問題や働き方改革による業務時間削減の流れもあり、ボランティア活動の重要性が増しています。
また、企業においても社会貢献という観点からボランティア活動は重要です。
そこで、ボランティア活動で人が死傷等してのトラブルを避けるため、どのような点に注意するかを中心に解説しました。
セミナーの内容
1. ボランティア活動と法的責任
① 問題となりうる責任
法的責任には次の3つがあります。
無償のボランティア活動でも法的責任を問われることがあります。ボランティア活動で問題となるのは、主に刑事責任と民事責任です。
民事責任では、民法の不法行為責任や使用者責任を解説しました。刑事責任では、刑法の過失致死傷罪などを解説しました。
② ボランティア活動と法的責任に関する具体的な疑問点
無償のボランティア活動について、次のような疑問点に回答しました。
- 良かれと思って無償で行ったボランティア活動において、そもそも法的責任を負うのはおかしいのではないでしょうか?
- 法的責任を負うにしても、被害者側にも責任があるのですべての責任を負うのはおかしいのではないでしょうか?
- あらかじめ免責について同意をもらっていた場合にも、責任を負ってしまうのでしょうか?
- ボランティア活動で責任を負わないためには、どのようなことに注意すればよいでしょうか?
③ 刑事責任
ボランティア活動として子どものハイキングの引率を行って、参加者の子どもが川で死亡してしまった裁判例について解説しました。
裁判例の具体的な事情を示しながら、刑事責任を負うかどうかのポイントを具体的に説明しました。次のような点がポイントです。
- 安全性等についての事前の調査
- 参加者への注意の周知徹底
- ボランティア活動時における監視体制の構築
④ 民事責任
ボランティア活動として子どものハイキングの引率を行って、参加者の子どもが川で死亡してしまった裁判例についての民事上の責任を解説しました。
また、竹細工を行ったときに子供が負傷した裁判例や、歩行介護のボランティア活動中に起こった事故の裁判例等を解説しました。
被害の救済に備えるという意味で、保険に加入しておくことも重要です。
2. AEDの使用と責任
① AEDを使用したにもかかわらず死亡してしまった場合
刑事責任として過失致死罪の成否が問題となりますが、緊急避難となり免責になることを解説しました。
② AEDの使用方法を間違えてしまった場合
民事責任として、緊急事務管理の成立について解説しました。
必要な場合はためわらずにAEDを使用することが、救命という点で重要です。